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<No.22>子は親の鏡

新年おめでとうございます。

  • 平成20年元旦を平穏に迎えることができたが、昭和が平成に代った頃は20年後の事などまったく想像もできず、また生きていられるのかも不明だった。
  • 当時は45歳前後で気力、体力とも充実し、企業だけでなく世の中の一翼を担っていると言う気負いもあったように思うが、有為転変は世の習いで、会社のトップに就いた平成11年をピークに2年後の解任劇に続く裁判沙汰や家内の癌による早逝と、この数年間はそれまで以上の辛酸を嘗め尽くして来たので、よく無事でいられる事に不思議な思いがする。
  • しかし昨年、四国八十八箇所1200キロを歩き、遍路で結願できた事で精神的身体的に自信が戻って来て、残りの人生を有意義に送る気持ちができた。その意味で、昨年は個人的には大きな転換期だったような気がしている。
  • 一方、世の中に目を向けると、日本がこの10数年間に国力を著しく落としてきたことが明白になって来た。
  1. 1人当りのGDPが先進諸国発展途上国を含む33国中で、94年の2位から06年には18位に転落
  2. 過去4年間の世界のGDPの伸張における日本の寄与率ゼロ
  3. ドルと並んで円の価値の暴落
  4. デフレ状況の継続、株価の低迷など
  • 数え上げれば枚挙に暇がない。
  • この間に東南アジア、極東アジア、中東諸国、ブリックス諸国など従来低開発国と言われていた国々が飛躍的に発展し、またヨーロッパもユーロ市場の成功とソ連東欧圏の崩壊による新市場の創出で政治的経済的に大きく伸びており、テロ戦争で無茶苦茶に戦費を浪費しているアメリカでさえ経済は着実に成長を続けている。
  • この内の数カ国に実際に行って見たが、国民は生き生きと生活しており、日本が高度成長を誇っていた当時の熱気が感じられた。また当時は旅先で何を買っても食べても安いと思っていたが、今は逆の感じで、円の購買力が著しく下がってきた事を痛感した。
  • 小泉内閣が7年前から危機打開のために日本の構造改革を打ち出し、国民の圧倒的な支持を受けて「破壊と創造」を断行してきた。続く我が故郷出身の安倍内閣もこの路線を踏襲するつもりだったが、経験不足と若さを露呈して敢え無く総辞職した事は残念極まりない。現在は福田内閣の誕生、参議院選挙による民主党の躍進で衆議院と参議院の勢力が異なる変則状態になり、国の大きな意思決定もままならない最悪の事態に陥っている。
  • 今わが国は明治維新、太平洋戦争の敗北に続く3回目の国家的危急存亡の事態を迎えている。パラダイムを根本的に作り替える時には、国家の目指す目標の明示とその達成のためのプラン、そして国民の協力が必要だが、さらに偉大なリーダーによる「決断と実行」が不可欠である。前2回の存亡の時にはそういう人材が様々な分野で輩出したが、今回は改革の対象とされる分野の根強い抵抗にあって、早くもその熱意は消え失せてしまったように見える。この問題は国家レベルだけでなく企業や家庭でも同じ事だ。
  • 改革には痛みが伴う。痛みに耐え偲び頑張っていてこそ、新しい生活や企業、国家の展望も開けてくるのではないか。団塊の世代を含むわれわれ高齢者は戦後の混乱期を生き抜くため必死に働き、その結果、世界に冠たる平和で高い経済力の日本を作り上げてきたが、精神文化面では新しい社会のあり方を同じように考え実行してきただろうか。
  • 最近、若い世代から、我々高齢者世代に批判の声が強くなってきたようだ。
    • 「地球環境問題、年金問題、膨大な国家の借金など、みんな彼らが残したものじゃないか」
  • 「あの世代は戦後、自分たちが頑張ったから今日の日本があると変に粋がっているけど、これからの社会を担う我々若い世代に先細りの状況を残して、どうしてくれるの」と子供の小さい時は基礎体力の養成、考え実行する力、苦境に陥った時の忍耐力の育成、集団社会における規則の遵守など、人間として生きていく上での必要不可欠な要素をきちんと教える事が大事であり、難しい高等教育は中学、高校からで十分だと思う。
  • 子供は大いに遊び汗を流し、色々な人や環境との接触の中から喜びや痛みを知り、学び、成長していくもので、小さい頃から塾や教師を雇って難題の解き方を教える教育など本末転倒だと思う。教育の目的は子供を自立させる事であり、ましてや子供を親の分身とか所有物に見立てるなどあってはならない事である。
  • 昔は「貧乏人の子沢山」とか「子供は七掛け」とか言われ、生活環境が今よりかなり悪かった所為か、親も子も生きるのに必至で、生活の知恵や成人になるための基礎知識は自然に身についていったようだが、今は「子育てに金が係り沢山の子は産めない」とか「父親の帰りが遅く親子や夫婦の会話がない」など衣食足りて心は貧しくなっている。
  • 独立心が無い子供もだらしないが、「子は親の鏡」と言われるように、そうした世代への不満は実は自らが植えつけたものだと言う自覚が無ければ、崩れかかった家庭の建て直しや様々な企業、そして日本の低迷からの脱出は不可能だろう。