· 

<No.19>世界の平和は経済の安定から

  • 今冬は暖かかった所為か梅も桜もいつもより早く咲き始めている。花芽は前年の寒い冬を経て冬眠明けの順序を踏まないと、ちゃんとした花が咲かないそうだが、同じような理由で愛用している蜂蜜の場合も、今年は女王蜂の産むミツバチがいつもよりひ弱で働きの悪いものが多そうで、集める蜜も品質が落ちるらしい。四季折々の営みはその時期の気候が例年通りでないと、どうもうまくないようだ。
  • それは経済にも当てはまる。冬は寒くないと冬服も暖房器具も売れないし、ウインタースポーツ関連も低迷する。古代ではどの文明でも気象を司る人が一番権力を持っていたようだが、現代でも同じ位大事なことなので、天気予報を担当する人はもっと当る確立を高める努力をして欲しい。特に長期予報は経済界では非常に重要なので、間違えたら関係者は腹を切るくらいの覚悟が必要だろう。
  • ところで話は変わるが、我々人間ほど同種の殺し合いを行う種はいないし、また他の動物を絶滅させた種はこの地球に存在しないそうだ。元々人間は弱い哺乳動物だから、他の肉食動物に捕食される存在だったものが、500万年くらい前から直立歩行を始め、不要になった手で食うための動物を捕らえる道具を作り出し、更に情報交換や知識を積み重ねる事で脳を飛躍的に大きくしたことが、結果的に人類の圧倒的な地球支配を可能にしたそうである。
  • 一方で古代から中世、近世、現代まで繁栄を誇った人間世界は必ず滅亡している。天変地異による場合、他の種族から滅ぼされる場合も多いが、自らの繁栄の限界を超えて自滅するケースが予想外に多いことがわかってきた。人間の傲慢さといってよいだろう。
  • 近年は新しい国であるアメリカが世界を圧倒してきたが、同時テロに対する聖戦として始めたアフガン、イラク戦争で今や身動きが取れない状況にあるのは非常に考えさせられる。同じ根から出ているキリスト教、ユダヤ教、イスラム教が20世紀初から今日までだけを見てもどれだけ多くの殺し合いをしてきただろう。精神の安定、世界の平和を説く宗教そのものによる戦争が、もっとも多くもっとも悲惨なのは皮肉としかいいようがない。
  • この関連で当面日本の最大の関心事は北朝鮮の核問題だが、5カ国による徹底した締め付けで核放棄を迫る方法は今の日本の選択肢として十分理解できるが、見方を変えるとこれは童話の「北風と太陽」の北風みたいなもので、締め付けられる側からすれば、簡単にギブアップするどころか、死に物狂いで抵抗するのは想像に難くない。
  • では太陽政策はあるのかと言えば、現在韓国が経済支援で融和を試みているが、私は今都知事選でも話題のオリンピックをピョンヤンで実施したらどうかと思っている。「何を馬鹿な事を」と言われるかも知れないが、事実古代オリンピックは770年も続いたが、競技開催中は全ての国が戦争をやめたそうだ。その精神を今日に活かすとともに、まず5カ国がオリンピックの企画運営、施設やインフラの整備、人材育成、資金援助などそれぞれ得意の分野で北朝鮮と全面的に協力交流し、同国経済の浮揚と人心の一新を実現することができれば、必然的に人々は心に余裕ができて、核よりも経済の発展と生活の安定に、そして南北統一による朝鮮半島の非核化へ自ずと向うだろうし、拉致問題も日朝間の過去の蟠りが融解しスムーズに解決への道筋が見えてくるだろう。
  • 「衣食足りて礼節を知る」と言う諺は、この問題においても真理だと思う。嘗て日本も戦後の貧しさを引きずった1960年代の安保騒動で揺れ動いた時代から、池田内閣の所得倍増政策への転換で、次第に国民所得が上昇するにつれ生活に潤いが生まれ、あらゆる面に余裕ができてきた。
  • それと同じで、本気で取り組むなら今からそうした動きを始めて、ロンドンオリンピックの次の更に次の開催、つまり13年後くらいなら、無理なくこれを実現できるのではないか。東京オリンピックに血道を上げるよりも、東アジアの平和と安定のためにピョンヤンオリンピックの開催に汗を流す方が、よほど我々の将来のためになると思うがどうだろうか。