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<No.15>人生は変化の連続

  • 2年前に素晴らしい成績を上げた夏季アテネオリンピックに対し、冬季トリノオリンピックはフィギュアスケートの荒川選手の金メダル1個という惨憺たる結果に終わり、なぜこんなことになったのか、原因はどこにあるのかさっぱり理解できなかったが、すぐ後にプロ野球の世界で初めてのWBC大会が開催され、わが王ジャパンチームが劇的な優勝を遂げたことは記憶に新しい。
  • アメリカは勿論のこと、カリブ海諸国のチームはメンバーをよく見るとメジャーリーグの錚々たる選手がずらりと並んでおり、要するに2次リーグ以降は韓国も含めメジャーの強豪チームと戦うのと同じだから、優勝などとても考えられないと思っていたし事実そのような状況にあったが、メキシコがアメリカを破ったことで状況は一変した。これは一度死を宣告された人間が何かの事情で奇跡的に甦ったのと同じことだ。死の淵を覗いた人間は強い。その後の人生はおまけみたいなものだから恐れるものは何も無い。
  • こうした気持ちが王ジャパンのメンバーの精神構造を作り変えたのだろう。2連敗した韓国には当然のように勝ち、決勝でも強豪キューバを突き放した。記念すべき第1回大会で世界一になったことはプロ野球ファンだけでなく日本人全員の喜びでもあり、長く歴史にとどめたい。日本のプロ野球は一昨年から楽天、ソフトバンクの新規加入、ダイエー、近鉄の撤退、セ・パ交流試合やアジア一決定戦の開催など改革が進んできたが、それは近年サッカーのワールドカップを始めとするスポーツ人気の多様化が進み、これまで巨人を中心に国民的スポーツとして栄華を誇ってきたプロ野球にも、このままでは共倒れになるという危機感が共有されるようになったことが、もっとも大きな要因だろう。多いに評価したい。
  • ところで、今年も春がめぐって来て、木々や草花はいつものように芽を出し、花を咲かせ始めた。しかし毎年全て同じことが繰り返されるわけではない。少しずつ、時には環境の変化により劇的に変わる事もある。
  • 私個人としては今年大きな変化があった。最愛の妻が癌で他界したからである。3年近い闘病生活で本人はもとより家族も色々大切なことを教わったように思う。人生、家族、人間関係、医療介護のあり方等々、人生観の根本を揺さぶられる出来事であった。この5年間多くの苦しみを経験したが、今回ほど大きな悲しみは無い。若い頃丈夫だっただけになおさらその感は深い。
  • 人生は本当に何が起こるかわからない。お釈迦様の言う「人生は無常なり。こだわりを捨て、あるがままの今を受け入れよ」という主張は、人生の本質論として十分理解できるし、そうしなければ次への展望は開けないだろう。しかし有漏の私には今はまだとても無理な話だ。
  • 妻の死を悼んで多くの方々から弔問や弔辞を賜ったことに対し、この紙上を借りて改めて御礼を申し上げたい。「皆さん、奥様をこれからも大切にしてください!」