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<No.69>今年は異常気象、で済むのか

連日の高温が常態化

  • 9月半ば頃からやっと秋の気配が感じられる状況になってきたが、とにかく今夏は全国的に高温が続き「命にかかわる猛暑なので躊躇なく冷房を入れてください」と連日気象庁から警報があった。昨年までは最高気温が25度を超えると夏日、30度を超えると真夏日。35度を超えると猛暑日。ならば40度超えは酷暑日か?と軽く考えていたら、いきなり「命にかかわる・・」となった。
  • 過去にも40度超えの記録は日本国内であったが、連日高温状態が続くとか、全国的に異常な高温が記録されたのは初めてだ。去年までは埼玉、群馬の各都市が40度前後の高温のトップ争いだったが、今年は加えて岐阜県や東北地方の日本海側、東京の青梅市でも40度越え、名古屋、京都などでは40度に近い気温がひと月も継続するなど、本当に命にかかわる暑さを実感した。熱中症の患者が激増し何百人もの命が失われたのも理解できる。

グローバル化する異常気象、中国地方豪雨、猛威を振る台風

  • 今年は世界的にも異常高温の地域が北半球全体に広がっていたようで、アメリカの中西部の砂漠地帯は50度を超える日が続き、ヨーロッパの諸都市も同じ異常高温状況に見舞われたようである。
  • 高温だけならまだしも国内では6月に熊本地方を中心に台風による被害を筆頭に、7月には「平成30年7月豪雨」で広島、岡山、愛媛等を中心に連日の大雨による土砂崩れや堤防の決壊で200人を超える住民が死亡し、住居や道路の損壊など膨大な災害が被ったことは記憶に新しい。
  • 次いで台風12号が南海上から北上して伊豆半島付近に上陸し、その後東海道、山陽道を西に向かって横断して東シナ海にコースをとったのは前代未聞のことだ。台風の風は左巻きなので通常の北上コースなら目の東側が北上スピードと重なって、相殺される西側より被害が大きくなるが、この台風では目の北側がが大きな被害を受ける羽目になった。7月豪雨禍の復旧があまり進んでない状況だったので二重のショックは限りなく大きい。
  • 更に8月は中旬に台風が5日間連続で発生し、その後20号と21号が相次いで四国の東側と和歌山大阪の間を抜けて北上し、陸上で60メートル近い瞬間最大風速を記録して、この地方に甚大な被害をもたらした。
  • 特に関西空港と大阪を繋ぐ連絡橋にタンカーが漂流、衝突し、橋が壊れて通行が困難になり、一時8000人もの人々が足止めを食わされる等、外国人観光客にも自然災害に弱い日本の実態をさらけ出してしまった。橋の1階部分の鉄道は9月中に復旧したが2階部分の道路はいつどのように工事をするのかまだ目途が立っていない。
  • 関西空港は人工島で埋立地に空港を建設したものだから、地盤沈下が進んで修復工事も容易でないようだし、大阪周辺も同じ状況で今回は高潮の時期と重なり建物への浸水被害は甚大になったようだ。
  • そしてとりあえず日本の今夏の最後の9月初めに北海道胆振地方を震源とする震度7の大地震が発生した。厚真町他で40人が主として土砂の下敷きで亡くなり、また全道が一時大停電を引き起こし、列車や新千歳空港も一日以上停止した。それにしても空撮で見ると胆振地方の山容が広い地域に亘り山崩れの傷跡が広がっていて、地震前の木々の生い茂る同じ場所とは思えない状態に変わっているのが印象的だ。山裾で生活する人たちの住居や、側を走る道路が何キロにもわたって山崩れの土砂に飲み込まれているのを見せつけられると、人間が築いてきた文明の浅はかさを思い知らされる。

4種類のプレートがせめぎ合う日本列島

  • 日本列島という国土が嘗てアジア大陸の東側部分から地下を走るユーラシア大陸プレートエネルギーにより引き剥がされて、現在の場所に落ち着いたその誕生の歴史。また今も列島直下で地震や津波を生み出している4種類のプレートのせめぎあい。さらに北半球の太平洋を大きく右回りしている黒潮を含む大海流の輪、そして遥か上空には偏西風と呼ばれるジェット気流など、人知を遥かに超えた自然の営みがあり、我々日本人は2万年以上も前から自然災害に恐れおののきながらも、今日まで徐々にこの環境にうまく対応し春夏秋冬の生活様式を作り上げ、人の数が増え生活も豊かになってきた。
  • 世界的にも特に18世紀以降の産業革命によりエネルギーの大量消費で食料が増え、科学医療技術の向上で、生活は豊かになり、人口も73億人に増えた。結構ずくめだが、その影響からか近年、二酸化炭素など温室効果ガスの排出量の増大で地球温暖化が無視できなくなっていると言われている。だから「今年は異常気象だ」で済めば良いのだが、来年も再来年もこうした状況が世界的に常態化すれば話は別だ。
  • 東京は異常高温以外上記災害の影響は少なかったが、大正12年に起きた関東大震災からすでに95年が過ぎており69年説はとっくに過ぎている。また環太平洋プレート境界の沈み込み摩擦解消のため、200~400年毎に太平洋側に大地震による大津波が起こってきたことが研究により明らかになってきたが、7年前の東日本沖の大津波災害に続いて、東海、四国、九州にまたがる南海トラフの大地震で大津波の起きる日が近いと言われている。また富士山の大爆発もあるかもしれない。
  • しかし以前にも述べたようにこうした大災害を懸念して毎日汲々として暮らしていても無駄な事だ。災害には多少の備えと起きたら逃げるしか手はない。嘗て中国の諺で「杞憂」というのがある。毎日空を仰いで何時天が崩れ落ちてくるかも知れないと心配しながら生活した杞人がいたそうだが、日本人がそれを本当に笑い飛ばせることがいつまでできるか問題ではある。

東京オリンピックは猛暑の8月に開催、熱中症対策が必須

  • それとは別に異常気象に関連して喫緊の問題は、東京五輪の開催時期のことである。8月の猛暑時をわざわざ選んで開催するわけだが、これは主として各競技団体がシーズンオフで集まりやすいとか、視聴率や経済効果が高いと言うことで、嘗てのような「選手第一」という思想は徐々に軽視されてきた。プロアマの線引きがなくなって五輪はトップアスリートが最高の演技を競う場に変身したこともこの考えを助長することになった。
  • しかし五輪誘致をきっかけに近年世界中の観光客が日本に押し寄せているが、今年の東京の異常高温を肌で感じて少し雲行きが変わってきた。もう開催時期の変更は無理だろうが、現実にはアスリートよりも、天井のない競技場や街頭で応援する観衆に多くの熱中症患者の出る事が十分予想される。このあたりの対応もしっかりやって欲しい。