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<No.61>築地市場移転延期に寄せて


  • 小池ユリ子新知事が就任以来オリンピック関連の仕事を始め精力的に活動しているが、 8月末に以前から開場日が決まっている豊洲新市場への移転を延期する事を正式に表明した。築地市場の荷受に20年間働いてきた私としては聞き捨てならないニュースである。

築地市場の歩みと豊洲移転への取り組み

  • 江戸幕府を開いた徳川家康が日本橋に魚河岸を開設以来、当時江戸庶民100万人といわれた世界最大人口の台所を潤してきた魚市場が、大正12年の関東大震災で崩壊し、昭和10年に現在の築地へ移転してからすでに80年を超える年月が過ぎている。
  • 移転後すぐに日中、日米戦争のために統制経済になったが戦後間もなく民営化され、全国から魚を集荷する荷受機関(卸売会社)と、そこからセリ入札等の取引で品物を評価買受する仲卸業者(後に市場外からも一定の資格を持った売買参加者が取引に参加可能になった)そして品物を買いに来る買出人、さらにはこうした業務に関連する、冷蔵庫業者、市場内で品物を運搬配列する小揚、食堂、雑貨店等の関連業者など最盛期の昭和50年代には早朝から5万人の人達が23万m2の敷地の中を忙しく動き回り、また大小の車が激しく行きかい多忙を極めた。(築地市場の取引の流れについては下記アドレスを参照)
    http://ogb.go.jp/nousui/syokusan/6580/006488.html
  • しかし築地市場は開設当初の時代を反映して集荷は船と貨車であり、買出しは荷車ないしは手籠が前提だったので昭和40年代頃からの車社会にはすでに通用しない構造になっていたのである。 (築地市場の見取り図は下記アドレスを参照)
    http://www.tsukiji-market.or.jp/youkoso/medemiru/medemiru.htm
  • 築地市場の施設配置が扇型になっているのは、かつて新橋駅から引き込み線があり貨車で全国から荷物が入荷されていた名残である。また当時は冷蔵技術が氷以外には無く、冷凍保存の意識は薄く、集荷物は即日販売が原則であった。施設は吹きさらしの建屋が主流だったため鳥や虫、小動物による被害も多いし、泥棒による品物の盗難も少なからずあった。
  • その後冷蔵庫が発達し保管技術が進んで、市場取引にも発泡スチロール箱が流通し始めてからは、空箱の処理が間に合わず市場の中に撒き散らされてゴミの山ができたり、ある年には仲卸棟から数回火災が発生し発泡のスチロール在庫品に燃え移って被害が拡大する事態にも襲われた。
  • 昭和50年代から市場の再整備、移転問題が喫緊の話題となり、実際に青果の神田市場と水産の築地が同時に太田市場へ移転するとか、現地で業務を継続しながら再整備を実施する等色々検討実施されたがいずれも失敗に終わり、その後の豊洲への移転も紆余曲折の挙句にやっと決まった経緯がある。(この間の事情は下記アドレス豊洲市場への歩みを参照)
    http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/project/
  • こうして30年以上の期間を費やし、多くの人々の意見を聞き協力業者の英知と経験を結集して完成した新市場だからこそ、間違いなく本年11月7日には予定通り開場するものと思っていた。しかしここに来て急に「都民の目線で見直す」と言う知事が現れた。まさに青天の霹靂である。(豊洲市場については下記のアドレスを参照)
    http://www.shijou.metro.tokyo.jp/toyosu/

移転延期論の主張と反論

1.地下水調査がまだ終わっていない。

2.工事費が異常に膨らんでいる。

3.荷捌きシステムで車が横開きできないのは不便。またターレット(小型の荷物運搬専用車)の上下階への移動スペースが狭すぎる。

4.仲卸業者の店舗間口が狭い。等である。

  • これに対し移転を当然視して作業を進めてきた人達からは、何を今さら、これでは円滑な移転に支障を来たす。すでに11月7日を前提にいろんな契約を結び準備を進めているので延期となれば保障問題になる。そして当局からも移転が延期されれば1日700万円の費用が発生すると言われている。予想される来年5月以降まで伸びると10億円以上の無駄なコストが発生し事業者も大迷惑を受ける。一体誰がこの無駄な費用を負担するのか?
  • 1.について:
    ➡︎当局は公式調査をすでに7回実施して何も問題はなく、最後の1回のデータ公表が来年1月になるとのことである。この状況で何か新しい事実が出てくる可能性があるのだろうか。現築地市場の使用水に比べてそんなに水質が落ちるのだろうか。(8月15~16日に都が調査した結果、ベンゼンの含有量は豊洲より築地の方が多かった由)
  • 2。について:
    ➡︎この工事が4年前に完了(五輪招致が決まる前)に完成していたら工事費は遥かに安くできていたはずである。近年は東京近辺の建設需要が著しく増えた。建設費が高騰しているのは東日本大震災復興と五輪関連施設の建設需要を考えれば当然のように思える。豊洲は大手ゼネコン5社が市場施設を分担して建設しているが、建設途中で建設基準額をクリアできない入札不調の事態が頻発したようだ。まして今の築地市場の3K環境を一掃する条件の設備環境を整えるなら建設費が上がるのは当然で、いわば都民の声の反映の結果でもある。一部に囁かれる議員の建設疑惑があるとすれば、それは犯罪として暴かれるべきで、延期論の根拠にはならない。
    ➡︎卸売市場は土地施設とも開設者の資産。それを入場業者が相応の使用料を支払い、卸売市場法の監視下において商売を営む所である。都としては豊洲の40万m2の(築地市場の1.7倍)土地を生鮮4品の商売だけでなく都民の憩いの場所や災害時の避難場所などにも使うため、築地市場のように生鮮食品流通のためだけに関係者の勝手気ままな絵を描くことはできなかったであろう。だからどこかにしわ寄せが来るのは仕方のないこと。都民に憩いの場を提供し、災害時には命を守る費用まで市場関係者がすべて負担する必要はない。
  • 3.について:
    ➡︎いずれも当局は設計前の時点で業者の要望を何度も聞いて、できるだけ新施設に反映させてきたと思う。即ち上記のような諸般の事情で面積が増えたにも拘わらず肝心の売り場面積が平場だけでは狭いので高層化せざるを得なかったと言う。スペースの真中を補助315号線が貫いているので卸棟と仲卸棟との連絡が不便という構造的欠陥はある。しかし荷捌きの施設が現在は出荷地域ごとに荷物をまとめ配送する買荷保管所しかなく、多品種集中配送システムは今回初めて設置されたもので、利用する小売店側にとっては大いに評価できる施設であろう。
    ➡︎またタ―レの移動スペースが狭いという指摘だが、繁忙時は片道通行制限するとか工夫の余地はあり、実際に使用してみてからでも遅くはないのではないか。
    ➡︎要するに聞きかじりの情報で最悪の状況を想定して騒ぎたてるのではなく、本当に自信のあるデータに基づく反論なら建設当事者も聞く耳を持つはずだ。そうした努力なら大いにやってほしい。
  • 4.について:
    ➡︎仲卸の店舗間口が狭ければ、隣の仲間同士で話し合って店を一緒にして、効率を上げるなど前向きの対応方法はいくらでもある。むしろ当局は過剰で赤字経営の仲卸店舗数をこの機会に整理統合するための店舗作りをしているのではないか。(2店舗を分ける仕切りは簡単に取り壊せる設計になっている)これは仲卸業者の意識改革の問題と考えるのが適切であろう。
    ➡︎つまりこの程度の反対論や苦情は今までに議会や当局との間で議論する時間はいくらでもあったはずだ。それにも拘わらず移転直前になって「都民の目線で一時止まって考える事」が本当に都民のプラスになるのか、実際どれだけの都民が懸案の豊洲新市場移転に反対しているのか、逆に1日も早く移転を完了し新市場が新しい東京の目玉地域として発展する事を心から願っている人も多数いるのではないか。
    ➡︎実は豊洲移転については築地の取引の中枢を占める鮪を扱う仲卸業者を中心に、以前から根強い反対論があったために、業者の意見が思うように集約できず、新市場の未来図を描きつらい事情があった。この反対論に対し、市場施設の老朽化、時代遅れの市場構造、食品流通事情の激変、商品の衛生管理事情などの大義名分を掲げ説得してきた経緯があるが、新知事の移転延期声明で再び移転反対論が復活してきそうだ。そうなれば収拾のつかない事態になり、嘗て神田市場が大田へ移転した時のトラブルの再燃になりかねない。

事業達成には強いリーダーシップが必要

  • しかし市場移転の経緯と現状を見て私が思うのは、なぜこんなに長い時間をかけて検討しても、こうまで全体の意見がまとまらず、枝葉の議論に振り回されるのかということだ。その原因は、現地再整備でも移転でも良いが信念を持って強いリーダーシップを発揮する人材が業者側にも当局にもいないと言うことだ。
  • 実はそういう人がいて現地再整備に成功した例がある。全国で2番目に大きい大阪市中央卸売市場本場で今から約30年前の1990年から16年をかけ現地再整備を完了した。当該市場は卸売会社大水の当時の社長清水氏の強いリーダーシップの下で、多くの困難を乗り越えて完成し、大阪府民の台所を今も支え続けている。いつの時代もどんな仕事場や戦場でもトップに優れたリーダーがいなければ大きな仕事は貫徹できないし勝利も得られない。

日本の食品流通事情の変遷

  • ここで施設論を離れて生鮮食品の流通のこれまでの変遷をおさらいする。
  • 戦後間もない頃日本は生鮮食料品の流通に中央地方を問わず卸売市場が大いに機能を発揮してきた。しかし世の中が落ち着いて来るにつれてスーパーマーケットが台頭し、それに影響を受けて従来小売の主軸であった八百屋、魚屋、肉屋等が街中からだんだん姿を消していき、更にコンビニや特殊小売店などの台頭でその経営基盤を完全に失ってしまった。
  • 一方生産者側でも、世界的な魚食拡大による中国などの乱獲で資源が大幅に減少、昔は魚の宝庫であった東シナ海等はほとんど魚が枯渇してしまった。中小漁船による沿岸や沖合の漁業を営む漁家の跡継ぎ難と高齢化、遠洋漁業の大手への集中と海外からの輸入魚の激増など魚を取りまく環境は大きく変わり(青果の事情もほぼ同じ)、卸売市場経由率は年々減少の一途をたどっている。
  • 20年以上も前にスーパー、コンビニ、大型食品店の組合と築地市場卸との間で、築地市場の設備制度について改善要望の会議があった際に、100件を超える要望が出されたが、その1割も応えられず今日に至っている。その時に相手から「中央卸売市場は長距離競走で2周遅れて走っているようだ」と痛烈な皮肉を言われた事を覚えているが、今回の豊洲移転が決定した時にまず検討すべきは、施設などハード面の近代化よりも、組織や制度などソフト面の見直しを先にすべきだった。

30年先を見据えた卸売市場のソフト面の検討課題

  1. 日本人の人口減少と魚食漸減傾向が継続する状況で、市場規模はどの程度を見込めばよいか:
    ➡︎築地魚市場は全国中央卸市場の約1/4を取り扱っているが、昭和50年代のピークから数量で4割減、金額で5割に低迷している。今後地方は人口減が進む一方、首都圏への集中傾向が見込まれるが、基幹市場としての機能を維持するのであれば相応の規模が必要になる。
  2. 中央卸売市場が生産者と小売をつなぐ流通の要として今後も機能するためには、荷受け、仲卸、買参等の役割はどう分担すればよいか:
    ➡︎生産者、小売の大規模化が進展する中で食品流通のネックになり下がっている市場流通のパイプを太くするためには、卸、仲卸の集中統合は避けて通れない。双方の一体化ということも検討の余地がありそうだ。
  3. 情報社会が大きく進展した現在、流通取引で行政当局の指導を今後も受ける必要があるか:
    ➡︎卸売市場の機能は集荷、評価販売、信用供与、情報発信等があるが、特に豊漁不漁時の販売調整や、買占め売り惜しみなど不正行為に対しては、行政当局の強い指導が行われてきた。卸売市場法の根底には業者性悪説があるが、全国的に在庫保有手段が充実し、また情報手段が多岐にわたり広がっている現状から、今後も商取引について当局の指導が必要なのか。場外並みに独立した商取引をするべきではないか。
  4. 事業者の整理、統合による場内流通組織の強化をどのように実現するか:
    ➡︎経営の多い仲卸の整理統合だけでは、市場強化にはつながらない。数の多いことでは卸売7社も過剰でありせいぜい3社程度が適正と言われている。仲卸600社の自主解散、合併を促すには卸も率先垂範して統合を実現すべきだ。行政当局の後押しも重要。外部からの新規参入を認めれば、既存の業者も大いに刺激を受けて活性化につながると思われる。
  5. 整備された港湾施設を国内の魚だけでなく輸出入にも利用するには何をすべきか。;嘗ては大手卸会社では海外に拠点を設けて成魚の直接輸入や魚卵加工事業を営んでいたが、今日ではほとんど撤退した。輸入魚が半分近い状況になっている現状で集荷を旨とする卸売会社が輸入業者に一任し傍観しているのは鼎の軽重が問われる。また農水省が進める生産、加工、流通の合体による6次産業化、輸出促進の一翼を担う責務があるのではないか。
  6. 世の中のインターネット取引がますます活発化する中で、水産物の取引を市場の事業としていかに取り組みシステムを構築するか。;豊洲では市場内無線LANを構築するようだが、他にも取引のリアルタイム入力システムの導入、(これはすでに自分がやっていた某荷受では15年も前に始めた事。事務作業の効率化は目覚ましい)セリの機械化も音声入力にこだわるから導入が遅れているが、手板の記入時に入力するシステムでも効果は絶大である。
  7. 少子化の進展が進む中で、市場を若い人たちの魅力ある仕事場とするために、どんな取り組みをすべきか;。例えば若い人が嫌う早朝セリは、効果がある活魚、鮮魚にとどめ、その他はせいぜい6時頃から販売開始する。夕方セリも導入しスーパーなどへの便宜を図れば小売業にも歓迎されよう。また休市日を廃止し量販店並みの年中無休営業を実施。但し従業員には完全週休2日制度をシステム化する。公共交通手段も無い時間帯に仕事をすることが生きがいの古参社員は別として、それを強いる職業に若い日本人は就職しなくなっている。
  8. 市場の閉鎖性を打破するために、外部からの役員登用や外部監査制度の充実を図る。
  9. 中央卸売市場は生鮮食品流通業務を通じて都民や周辺の人々の食卓を支えているが、場外の取引の変化にも柔軟且つ迅速に対応する意識改革の必要性。
  • まだいくつもテーマはあるがこうしたソフト面の問題を外部の知識人や専門家も交えてまた30年後に市場の実権を握る若い世代や優秀な人材を抜擢して、こうした議論をさせ結論には現幹部が責任を持つ仕組みを整えておけば、上記のような問題は起こり得なかったはずだ。
  • 実際に荷受の合併話などをやりかけた事も何度かあったようだが、未だに実現しないのは現状を維持する事が市場にとってまた個人にとっても至上命題である保守勢力の方が、新しい市場のあり方を目指す新規勢力より常に強かったと言うことだろう。
  • 豊洲移転問題をカオスに陥らせないために築地市場の抱えるこれらの大きな問題の解決が一朝一夕にできるとは思わないが、新しい場所への移転となればこれは大改革の千歳一隅のチャンスである。新聞情報では、市場業界のトップは上記のような改革に前向きな姿勢を示している。それゆえに新知事が移転問題に関して枝葉末節な問題点を挙げていたずらに移転時期を遅らせるようなパフォーマンスに力を注ぐのではなく、まだほとんど手つかずの市場を取り巻く上記諸問題を先頭に立って改革推進することこそが大事な使命である。
  • その意味で新知事はパワーも十分ある人のようなので、都営卸売市場の構造改革の実現に向けて大いにその実績が上がるように行動される事を切に期待している。

希望に満ちた新市場から転落した豊洲市場、そして東京オリンピックは?

  • 以上は9月10日頃までの情勢を踏まえて私見を述べたものだが、その後も連日のように豊洲市場問題がマスコミをにぎわしている。主なニュースは豊洲の土地が東京ガスの石炭による都市ガス製造所だったことで、ベンゼンなど7種類の汚染物質が十分除去できたのかという疑惑。これに関して都の説明では汚染土壌を取り除き、そこに2層に分けて4.5mの盛り土を行う決定がなされていたが、実際は市場各棟の地下(全体の30%程度)に盛り土をせず空間にしてコンクリート打ちまたは砂利を敷き詰めたままの状態であり、1部に水が湧き出ていると言う事実である。
  • しかし湧水の水質検査結果で、一番懸念されたベンゼンは検出されず、ヒ素や六価クロムのような有害物質も基準値の40%との結果で問題はなかった。
  • 地下の盛り土を止めたのは地下外壁を防水し地下はコンクリートで覆う方が水も侵入せずまた空間を配管や建物のメンテ、タ―レ置き場に使用できるメリットがある。1部に砂利を敷き詰めたままにしてあるのは万一汚染水が湧きでた時に備え、ショベルカーを導入して作業をし易くする、そのために配管も高い所に設置したとのこと。十分検討された設備配置のように思える。
  • 直近では地下の空洞化を誰が決めたのかその犯人探しが問題の中心になっていが、水質に問題ないのなら、それは都組織機能に問題があることで都政全般の刷新を図る事が必要ではないのか。
  • 更に豊洲新市場の建設そのものが適切であったか、また経済性は妥当なのかを新たに専門委員会を設置して検討する事にしたと言う。このため移転の時期は年単位で先送りになる可能性が出てきた。私は築地市場で仕事をしていた頃に移転問題に少しは参加したものとして思うのだが、こんなことを今更調べて、移転を長期に止めるほどの答えが出せるのか大変疑問を感じる。
  • 30数年前に大田新市場へ神田青果市場と一緒に移転する話で、接続する海の埋め立てを「野鳥の会」の反対でご破算になった事、築地で開場のまま再整備をする計画が実施間もなく業者の反対で中止になった事、その後移転反対派の人達をやっと説得して石原知事が移転を決断したが、築地市場を移転建設する大規模な土地が見当たらないために、すでに部分的に売却していた豊洲の土地を東京ガスから無理矢理購入した事。その場所が都市ガス製造所だったのでベンゼンなどの汚染物質を除去するのに莫大な費用をかけて安全な土地に戻したこと。
  • 一方3年前に東京オリンピックが決まり、豊洲、晴海、築地そしてウオーターフロント地区が五輪の中心地域となり世界の脚光を浴びる事になった。そのため建設需要は増大し、費用も上昇し続けているが、まだ売却していない築地市場の土地は五輪決定の3年前(2008年)の公示地価で計算して3500億円の評価額になるとのことで、その後の値上がり状況を考えると建設費の上昇を十分吸収してあまりある価額になる可能性が高い。(もともと築地の地価に比べ豊洲は3分の1というのが相場だった)
  • こうした過去の歩みのほかにゼネコンと当局が癒着して建設費が水増しされ(入札率が3棟とも99%以上)税金が無駄使いされていないか、設備そのものが過剰ではないか。等を調査し結果を出すのに長期間かかるそうだ。
  • ゼネコン各社は築地市場の現地再整備の前から設計工事に関与しているので、卸売市場のハード面のノウハウは世界1詳しいと私は思っている。だからそれを凌ぐ調査能力を発揮して新市場はかくあるべしという答えが出てくるのであれば大いに評価したい。
  • しかし豊洲移転延期の決定で1日あたり700万円の無駄なコストや、準備を進めていた業者の諸費用に加え、すでに連日の興味本位のマスコミ報道で豊洲新市場は
    • 土地や水質、空気までもが汚染されており生鮮食材を扱う市場には相応しくない。
    • 建物は入場する業者の要望も聞かず仲卸店舗の間口は狭く、またタ―レ等が少し重量オーバーで走ると床が崩壊しかねない危ない構造になっている。
    • 都とゼネコンの癒着で建設費が暴騰しており、都議会与党も絡んでいる疑いがある。
    • 東京都は魑魅魍魎が跋扈する伏魔殿のような組織だ。
  • 等の風評被害が東京周辺にとどまらず、日本中から今や世界へと広がりつつあり、移転の結論が長引くほどそのダメージを回復するのに膨大な時間と関係者の苦労と資金が必要になる。この責任は誰が取るのか?
  • 本当に言われるように6000億円近い資金を投じて建設した新市場が、上述のような酷いもので移転できないのなら、当局やゼネコンその他関係業者が責めを負う事になるが、市場を移転してからでも対応できる細かな問題しか無いと言う結果が出たら、この状況を先導し拡大させた関係者は当然の責めを負う事になる。築地市場や豊洲新市場の全体像をよく知らずに、自分の得意な分野の知識のみで、都民をいたずらに惑わすような発言は恐ろしい結果を招きかねない。
  • 最後に小池都知事の政策の本命はオリンピックのインフラや設備建設費の大幅削減と思われるが、リオ五輪を終え事前の運営準備等を考慮すると実際の建設完了までの期間は3年半しかない。森組織委員長とこれから議論する事になるようだが、コスト削減が合意できても建設が間に合わなかったでは済まされない。
  • 東京は1940年に初めてオリンピック開催の承認を受けたが、第2次世界大戦のために中止せざるを得なかった。
  • 1964年の時は新生平和日本を世界にアピールする大会だったが、開会式のマスゲームを参加希望者の調整がつかず直前になってすべてを取りやめた苦い経験がある。
  • 今回は国立競技場の建設費の問題で再設計を余儀なくされ、エンブレムのデザインパクリ問題では再募集をする羽目になり、更に舛添前知事が政治資金乱用の道義的責任を問われ辞任、その前の猪瀬氏を含め五輪決定以降3人目の都知事が誕生した。
  • ご難続きの東京五輪を成功裏に終わらせ次の世代に日本の将来をつなげていく起爆剤になるように新知事は粉骨砕身努力してほしい。