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<No.60>感動のオリンピック(番外編)

リオオリンピックの成功とマスメディアの報道への信頼性について

  • 南米初のオリンピックが8月5日から17日間リオデジャネイロ(1月の川の意)で開催された。ブラジルでは2年前に国技でもあるサッカーワールドカップが無事開催されたが今回は28競技にも及ぶビッグイベントなので、予定通り開催が可能なのか関心を集めていた。 
  • このメッセージでも何度か書いたが、競技施設やインフラ整備が間に合うのか、運営が順調に行えるのか、警察官がストライキをする状況で治安の維持は計れるのか、ジカ熱は根絶できるか、そして最大の問題は大統領が弾劾裁判にかけられ大会に出席できないと言う政治的混乱である。
  • こうしたマイナス情報がマスコミからどんどん流されたが、その都度リオの組織委員会やIOCからは、設備の質を下げるが絶対に間に合わせる、建設計画は順調だと発表され、またジカ熱はほぼ退治した、治安については警察との話し合いがつき問題はない、更には政治的な混乱が五輪の実施に影響しないと超強気の発言のように聞こえたが、五輪を終えてみての印象は事前の不安予想を覆す素晴らしい大会だったと言うことである。
  • まだ表面化していない事態があったのかもしれないが、インフラ整備では競技場へのアクセス時間がいい加減で困ったとかの苦情はあるが、ハード面で間に合わなかった事実は聞こえてこない。日本の交通システムの時間管理は世界1だが、外国では定刻通りの運転や案内サービスなどほとんど無いに等しいのでこの事を非難するには当たらない。
  • 競技設備も予算不足で安価なものに変更したり簡略化したと言うが、それが入場者の不便を増大させた様子はなく、開会式の1月前には完了したと聞いている。治安の確保も警察官への給料が支払われて安定し、凶悪犯罪やテロ事件は発生しなかった。泥棒や強盗などはかなりあったようだが、それは五輪で無くても起こっている事だろう。
  • ジカ熱が騒がれたのは2~4月の南半球では真夏の時で、大会は8月の真冬時だから媒介する蚊は激減するといわれ、事実この事での騒ぎは起こらなかった。大統領の弾劾問題で開催への影響が心配されたが大したことはなかったようで、IOCとリオ五輪組織委員会が発信し続けた通り南米初の五輪は大成功だった。
  • 初日の開会式を見て、IT技術を駆使しとてもカラフルな映像と場内外の飾り付けに先ず驚き、更に暑い国の陽気さをサンバのリズムや独特の踊りで表現し、特に会場のフィールドを全面スクリーン化して、ブラジルの歴史や色々なテーマを映像化した技術やプロデュース能力の高さには圧倒されてしまった。
  • 競技そのものも多くの感動を生んだ素晴らしいパフォーマンスが随所にみられたし、運営に携わった関係者そしてたくさんのボランティアの人達の献身的且つ楽しげな支援活動も大きな力となったようである。最終日のヌズマン組織委員長の感極まった閉会の挨拶はその象徴とも言えるだろう。
  • 私もマスコミの尻馬に乗って開催直前まで心配だったことをこのメッセージでも書いたが、全く不明の至りである。しかしこんないい加減なニュースをまことしやかに流し続けたマスコミは何を根拠に誤報を流してきたのか。懸命に大会の成功に向けて努力をしてきた関係者に失礼という言葉では済まされないひどい仕打ちをしたことになる。

ドーピング問題の深刻化

  • 今大会の大きな問題はブラジルとは無関係の、ロシアをはじめとするドーピング問題である。すでに東西冷戦の当時から共産圏の国では国威発揚のため国を挙げてドーピングが行われている事が囁かれていた。ソ連、中国、東ドイツ始め東欧諸国が国を挙げて後押ししオリンピックで毎回好成績を収めてきた。
  • 陸上、水泳など記録を争うメイン競技やレスリング等の格闘技、重量挙げ等で、興奮剤、筋力増強剤、血液増量剤などの薬剤投与を始め、検査逃れの方法や、偽資料の提供、データ改ざんなどに国家や組織が介入している事実を、今大会前にWADAが暴露しロシアが告発され実態が明らかになったが、拘わった人達の告白だけで物的証拠に乏しいため、IOCはロシアの五輪参加の是非を厳しい基準を設けて、最終的には各競技の国際連盟に一任してしまった。五輪を守るために現時点での苦渋の決断であろう
  • 勝つためには手段を選ばない風潮が国家国民の文化となっている意識を変えるには、1回鉄槌を振りおろしただけでは解決しない。ケニアのように今後ドーピングに関与したものは犯罪者として裁くと言う方法もあるが、やはりドーピングをすると国も選手関係者も失うものが大きいという事を認識させ、厳しい制裁の仕組みを作ることであろう。
  • これは旧共産圏だけの問題ではない。西側も国家的関与は無いにしても100メートルのベン・ジョンソンをはじめ多くの選手関係者が関与してきた事実があるので、自らも姿勢を正さねばならない。幸い日本人は異常に潔癖症なのでこの問題は皆無に等しいが、東京五輪の成功に向けて世界のアンチドーピング運動の先頭に立って欲しいものだ。

2020年の東京オリンピックに向けて

  • さて4年後はいよいよ東京オリンピック。日本はリオでも選手強化が着々進んでいたようで、金メダル14個メダル総数30個以上の目標に対し、金12個、総数41個と金メダルこそ目標にわずかに届かなかったが総数では史上最高を獲得した。五輪基準の金メダル数ではドイツに次ぐ第6位、総数でも第7位と次期開催国にふさわしい成果を上げた。
  • 競技別には女子レスリングの金4個、中でも伊調馨選手の五輪4連覇は男子水泳のフェルプスや陸上走り幅跳びのカールルイス等、過去男子4選手に次ぎ5人目、女子では世界初の快挙ですでに国民栄誉賞の呼び声も高い。また柔道は男女計14種目中12個、内金3個、男子は全7階級でメダルを獲得しロンドンの屈辱から立ち直った。体操も内村選手等の頑張りで男子総合と個人総合の2冠達成、水泳では萩野、金藤選手等の活躍で2個の金を含む7個のメダルを獲得した。
  • その他にもバドミントン女子Wでタカマツペアが史上初の金メダル。卓球男子は中国を追い詰める銀、女子も銅。テニスの錦織選手は96年ぶりにメダル獲得。シンクロでは井村コーチの厳しい訓練に耐えて2大会ぶり銅、カヌーの羽根田選手はマイナーのハンデを克服して史上初の銅、陸上男子400mリレーで強豪アメリカを破る銀メダルは黒人コンプレックスを一掃する快挙だった。球技では男子7人制ラグビーで強豪ニュージーランドやフランスを破って4位とワールドカップを再現したり、女子バスケットが世界の強豪を相手に入賞をはたしたり、勝負を最後まであきらめないその活躍ぶりは目覚ましかった。
  • 閉会式で小池新知事が次回開催国として五輪の旗を引き継ぎ、また10分間の東京五輪プレゼンでは安倍首相がアニメのマリオに扮して登場し、更には仮想現実の技術を駆使した青森大学の新体操の演技の披露で世界の注目を集めた事は喜ばしい。メイン会場の建設見直しやエンブレム問題、都知事2人の交代などつまずきが目立つが、小池新知事の下で予算の見直しなどできるだけ早く決着し、東京五輪が大成功することを大いに期待している。