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<No.59>最近の話題 熊本地震他

地震大国の日本

  • 去る4月14日に熊本市を中心に震度7(M6.5)の大地震が発生した。続いて16日にはこれを遥かに上回る本震(M7.3)が襲い、50人の死者行方不明者と多数の住宅や道路公共施設が甚大な被害をこうむった。直下10キロの浅い場所で起こった断層のずれが原因のようで、マグニチュードの割には被害の大きさが目立つ。
  • 5年前の東日本大震災とは比べ物にならないが、21年前の阪神淡路大震災と同じく縦揺れで、多くの建物が上下に押しつぶされている。下関に生まれ育った我々は、中国九州地方で台風や梅雨時の豪雨による水害や、雲仙、阿蘇、桜島等の噴火の情報はたびたび経験したが、大規模地震の経験はない。だからこの地方の人々は今回の地震に大きな恐怖心を感じた事と思う。しかも震度5~6クラスの余震がその後もたびたび発生し、2か月以上経過した今も震度3~5クラスが断続的に起きているのは珍しい。地震に詳しい関係者の話によると、中九州地域では熊本から阿蘇を通り別府まで活断層が連なっており、更には四国の真ん中を横切り和歌山を貫いて、富山から静岡までの大地溝帯(フォッサマグナ)につながる中央構造線があるとのこと。
  • 日本列島が現在の形になる前に、この地域は構造線の南西と北東に分かれておりその後の地殻変動で今の姿になったそうだ。文部省地震調査研究推進本部の発表した日本の活断層帯の分布状況を見ると、日本全国で断層のずれによる地震の被害を免れる場所を見つけるのは甚だ難しい。これに海洋プレートの移動による5年前の大地震や大津波の状況を考えると、日本列島に安全な場所は皆無といっても過言ではない。

地球は常に動いている

  • しかし、これは日本だけの特殊事情ではなく太平洋を囲むどの地域(南北アメリカ西海岸、インドネシアなど東南アジア、北方千島列島など)でも同じ状況であり、さらに地球表面に存在する10数枚のプレートが重なり合う地域では大なり小なり地震を避けては生活できない。プレートの動きは年に6~8センチとわずかだが10~100年間で溜まるエネルギーは膨大になり、陸地の活断層を増やしていく要因でもあろう。但し発生の時期は大きいものほどその間隔は長いので、大災害を避ける方法の開発はこれからも進むだろう。
  • しかし、悪い話ばかりではない。人間の7~8割が住みつくのはこうした危険な地域である。それは、こうしたところほど石油や石炭を始め金銀などの貴金属や、鉄アルミなど産業には欠かせない金属が算出し、また各種の水産資源や観光資源等も豊富にあるからだ。
  • 要するに我々は毎日こうした地震津波だけでなく交通事故や火事、病気、空から星が降って来る等のリスクも背負いながら生きている訳だが、杞憂という中国の言葉もあるように、心配事に汲汲として生活するのは精神的によくない。苦しみを忘れることも人生に前向きになる方法だ。

(閑話休題)

  • ところで、伊勢志摩サミットが無事終了し、安倍総理の消費税増税先送りはお墨付きをもらったようだが、もはや先進主要7カ国だけでは世界を動かせないと言う事実がいよいよ明確になってきた。特に中国の経済的軍事的存在感はますます増してきている。東南アジアもオイルショック前の頃と比べると政治力経済力の増大は目を見張るものがある。今後その傾向はますます強くなると思うが、我が国も手をこまねいていれば脱落し惨めな将来を迎える事になる。
  • 大昔、仁徳天皇が国情視察で、民のかまどから煙が上って無いのを見て3年間の免税を実施したら、民の生活が豊かになり政治が安定して喜ばれたそうだが、現在でも同じことが言える。7月の参議院選挙で野党は「アベノミクスの失敗を明確にせよ」と言うが、民主党政権時に国家の年間収支を表すプライマリーバランスがマイナス30兆円を超えていたのに、今年は10兆円のマイナスに縮小という大きな成果をすでに達成している。
  • 一方、子育ての負担をできるだけ少なくする政策や、女性の活躍する社会の実現、熊本地震に対する迅速な手当も行っているが、そうした政策の実行に対し野党はどんな対案を考えているのか全く見えてこない。
  • 議席を増やすために全く考え方の異なる共産党と民進党が共闘して多少成果が上がっても、選挙後の国会運営がぎくしゃくするのは目に見えている。原資のあてもなくバラ色の夢を振りまくだけでは何も実現しないことは、民主党政権の3年間で十分理解している。今の野党なら昔の日本社会党と同じで自民党が慢心した時のチェック機関としての機能を持つだけで十分だ。
  • 政治に期待するだけでなく経営者も労働組合ももっと自分の果たす役割を自覚すべきだと思う。法人税を実質30%以下に下げ、消費税も景気が回復するまで更に2年半延長する事にしたのだから、経営者は海外経済の減速の所為ばかりにするのでなく、自ら投資先を開発し事業を刷新するなり、デフレ時代に溜めこんだ内部留保を配当に回すだけでなく、ベースアップ等にも配慮してGDPの成長にもっと貢献すべきだと思う。
  • 最後に今の日本で大事な政策の一つに、女性パワーの活用と子育ての負担軽減が挙げられる。すでに国策として推進していることだが、いずれも社会の理解、特に男性の協力が必要である。永年培ってきた男性優遇の社会制度を、男性が簡単には手放したくない気持ちは理解できるが、世界の流れに乗り遅れれば将来ひどいしっぺ返しを食らう事になる。
  • また最近、高齢者の中で近くに保育園が建設されるのを、赤ちゃんの声がうるさいからとか、車の運転に支障があるからいやだと言って反対する人が多いと聞く。毎日新聞によればこの3年間に建設を断念したものが11件、計画を変更したものが15件を数える。それも緊急を要する東京が最も多いとのこと。子供が楽器を打ちならすのがうるさいので防音設備をと言うならわからないでもないが、子供の声がうるさいとはいかがなものか。子育てと仕事に多忙な若い夫婦の苛立ちが目に浮かぶ。
  • 私は鎌倉に住む孫の元気な姿をスマホで見るだけでもこよなくかわいいし、住まいの近くに2年前に保育所ができて、たまに先生と子供が集団で散歩するのを見るととても楽しくなる。近年高齢者の家庭で犬猫等ペットを飼って楽しむ人が多いようだが、そんな人達が保育園の建設に反対する理由がわからない。
  • ペットと子供とどちらが大事なのか言わずとも知れた事だろう。基本的人権の尊重も大事だが、義務を果たしてこそ権利を主張できるものではないのか。