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<No.53>師走の嬉しいニュース雑感

  • 昨秋は恒例の紅葉狩り旅行を止めて都内や周辺の町を十か所くらい散策してみたが、紅葉はあまり目に入らず代わりに神宮外苑や白金プラチナ通りなどの銀杏の黄色が目についた。そして枯れ落ちた黄色い絨毯の上を歩くのも結構風情があった。
  • その後、師走に入ってすぐに真冬の寒波に襲われ、各地でも季節外れの大雪に見舞われて気持ちが萎えそうになったが、そんな中で次の3点の明るいニュースが報じられた。

ノーベル物理学賞に3人の日本人

  • 1つ目はノーベル物理学賞に青色発光ダイオードの開発と普及に尽力された3人の日本人が選ばれた事。赤と緑は早くから開発されていたが青色は高エネルギーのため開発が難しく、実現は21世紀になると言われていたものだ。その用途は室内灯だけでなく諸分野に爆発的に広がり使用電力量が大幅に削減されるようになった。私の家でも居間の電燈をLEDに取り替えて電気代の値上げを吸収できた。今後、更に高エネルギーの紫外線ダイオードの開発を進めるそうで、成功すると太陽光と同じ光が作れるようになりその用途は計り知れない。
  • この発明は中村先生が徳島の化学会社に勤務していた時にLEDのコストダウンと用途開発に尽力され、その特許料の評価で会社が2万円の謝礼金を払ったが、開発者の中村氏はその膨大な用途から算定し200億円の特許料を会社に請求して大きな話題を呼んだ。この404訴訟について東京地裁の判決では、何と604億円の価値があり200億円の請求は妥当としたが、その後8億円で和解したといわれる。この裁判は日本の企業に所属する研究開発者の特許料の見直しを迫る大きな一石となった。いまだに会社側にはその時のしこりがあるようだが、結果は先生の読み通りに推移しており、ノーベル賞受賞を機会に先生の和解の呼びかけを受け入れて、新しい分野の共同開発に取り組む方が会社にとってもよほどプラスだと思うが、なぜか会社は拒否された由。
  • いずれにしても日本人の科学分野における世界への貢献度は、アジアの中では圧倒的であることを改めて感じた。また技術の道を目指す若い人たちに大きな夢を与えてくれたこともうれしい限りである。

オリンピックの40項目ルール改正

  • 2つ目は先のオリンピック総会でバッハ新会長の主導で40項目のルールが改訂された事。この中で2020年に東京オリンピックを開催する日本としては大いに関心を引く項目が何点か有った。
  • まず競技数を従来の26に限定せず、選手数を約10500人、種目数を約310とし、開催都市の要望により競技数を増やすことができるようになった事。これにより日本期待の野球、ソフトボールはもちろん新種目の空手やスカッシュも実施できる可能性が出てきた。今年7月の総会で審議決定する予定だが、あまり人気の無い種目は縮小してでも是非採用してほしいものだ。次に競技の実施場所を、開催都市に限らずその国の別の都市で、場合によっては別の国の都市で実施する事も可能になった。すでにオリンピックの規模が大きくなり過ぎて、1都市での開催が難しく、しかも協議施設の建設やインフラ整備、選手強化など国レベルでの対応が不可欠な現状を見れば妥当な改革である。
  • 東京の場合でも、他府県にある施設を利用することでオリンピックが国民全体に浸透し、また大震災の復興の大きなエネルギーにもなる。無駄な建設費をかけずに済み、終わった後の施設の有効利用についても柔軟に対応できる。
  • 2026年冬季オリンピックに札幌が再び立候補したが、今回の改訂主旨を十分生かした合理的な計画を立案して再度の招致を実現してほしい。

突然の衆議院解散、自民党圧勝

  • 3つ目は突然の衆議院選挙。結果は安倍首相の思惑通り自公が2年前と同じ全議席の3分の2を超える326議席を獲得して圧勝した。10月頃に解散の話がちらちら出始めた時は、自公が圧倒的多数を持つ状況でわざわざ選挙する意味がないと思っていたが、消費税増税後の経済情勢が思うように回復せず、また経済成長の「第3の矢」が低迷する状況の中で新閣僚の思わぬ不祥事が重なり、改めて国民に「アベノミクス」の評価と今後の推進のお墨付きをもらいたかったのだろう。
  • それにしても野党の対応は何とも情けない。前回のあまりの大敗のショックを2年後の今日も引きずり、2大政党制、政権交代を標榜してきたのに、過半数の候補者も立てられないようでは何をかいわんやだ。政治家は常在戦場と言う意識が根本的に欠けている。
  • みんなの党は解体し、維新の党も分裂し、新しく発足した「次世代の党」は壊滅的大敗、生活の党も同様で、一人共産党だけが大躍進した。要するに自民党を批判する受け皿がなかったと言う事だろう。
  • 野党や多くのメディア、評論家はアベノミクスを厳しく批判するが、ではその代わりに彼らはどのようにして現状を打破し、明るい未来を約束してくれるのか。それが今回の選挙でも少しも見えてこない。ばらまきや格差拡大を批判するのはわかるが、では自分たちが訴える施策を如何に実行し、またその財源をどう確保するのか。1000兆円以上の借金を抱え、これ以上後世に付けをまわす愚は避けねばならない。
  • また経済を担う企業経営者はデフレ下で借金を返済し、資産を大きく増やしてきた。消費増税では1円の負担もないうえ法人税は減税されるのだから、その分被雇用者の賃上げを進んで実行し、消費需要を喚起するお手伝いをすべきではないのか。
  • 更に今回の選挙で投票率が52%と戦後最低となったが何とも情けないことだ。民主主義の危機を声高に唱えるのもいいが、政治における自分の権利を行使出来るのは選挙以外にはほとんどないということを、国民はもっと真剣に考えるべきだろう。
  • これで当分は安倍内閣のペースで政治は進められよう。小泉政権以来の長命内閣が実現しそうだ。脱デフレ、財政改革、経済成長と言う大きな仕事を完遂させるには国家全体を動かすようなエネルギーとそれなりの時間が必要である。しっかり腰を据えて国民の意識改革を促すとともに、日本の将来に明るい展望を示してほしい。