<No.44>復活安倍自民党政権への期待

  • 昨年は世界の政治を動かしている多くの国々で大統領の選挙が行われた。ヨーロッパでは7年ぶりにフランス、5年ぶりにロシア、北米のアメリカでは4年ぶりに、そしてアジアでも5年ぶりに韓国で大統領選挙が実施された。更に東アジアでは10年ぶりに中国共産党総書記の交代と北朝鮮の最高指導者の世襲も行われた。
  • 大統領制は任期が決まっているので、これだけ重要な選挙が重なったのは単なる偶然に過ぎないが、オバマ及びプーチン大統領以外はすべて新人に替わったので大きな時代変換の年であった。日本もその流れに乗り遅れまいとしたかどうかは知らないが、急遽12月16日に総選挙が3年3カ月ぶりに実施され、これまで続いた民主党政権が惨敗し自民党が復活安倍総裁の下に300近い議席を獲得して圧勝した。
  • 鳩山民主党政権が初めて誕生した時は、バブルの崩壊後低迷を続けていた自民党の政治に比べ大いに新鮮さを感じ、時代が変わるかも知れないと日本人の多くが期待を寄せた。
  • しかし鳩山首相は沖縄米軍基地移転問題で沖縄の住民を迷走させ、日米間に深刻な不信感を植え付けて辞任した。
  • 菅首相は思いつきで政治を行って野党の不信を買い、参議院選挙では消費税アップを口にして国民の不信を買い、大震災後の福島原発の問題では被害者ばかりか国際的にも不信を買い、ついには野垂れ死にとなった。
  • そして3番目の野田首相も、民主党が「マニフェスト」で約束したテーマの目玉である「政治主導を官から民へ」「沖縄米軍基地を最低県外へ移転」「子供手当の新設」「高速道路の無料化」「八ッ場ダム建設中止」「特別会計の埋蔵金掘り出しによる財源確保」など口当たりの良い公約はほとんど実現していないにも拘わらず、民主党ではやらないと言っていた消費税増税を、財務省の手のひらに乗り国会審議を無視して自公3党の合意に基づき法案を無理やり通してしまった。
  • 多くの国民は子供の世代の事を考えれば増税はやむなしと思っているが、その財源をどのように使い将来の生活の安定に役立てられるのか、たいした議論もせず騙まし打ちした事が国民の不信感を増幅したのだろう。一方の自公も消費税については同罪であり、これから開催される「社会保障制度と税の一体改革」について十分議論を尽くして納得ゆく説明をしてもらいたい。
  • 今回の選挙は自民党が大勝したように見えるが、内容をよく見ると比例代表では3年前とほとんど変わらず、民主党の落ち込んだ分は第3極へ流れており、他方小選挙区では第3極の準備期間不足に民主党への不信感が重なり、投票率が戦後最低の59%台に落ち込んだ事が組織政党の自民党に有利に働いたに過ぎない。
  • しかし選挙前の調査では80%を超える人達が投票すると言っていたのに、実際は41%も棄権した事実はほめられたことではない。政治に参画できる唯一の機会を無視するようでは、これからの日本の政治に不満を言う資格はなかろう。
  • 野田前首相は「嘘つき」と言われるのが嫌で早期解散を選んだという説もあるが、民主党の完敗を避けるのなら自ら総辞職して、党の有望株とされる細野氏を後継にして時間稼ぎする方が良かったように思っていた。その分第3極が力を付けたと思うが、自民党にこれほどの追い風は吹かず、民主党への逆風はもっと少なかっただろう。
  • 自公も過去3年間ただ早期解散ばかりを唱え続け、あの大震災の時ですら挙国一致内閣を避けていたずらに無駄な時間を過ごし、東北の復興を遅らせた事はぬぐいようのない政治不信を招いてしまった。
  • それはそれとして自公が政権を奪還したからには、選挙公約通り国の根幹を蝕むデフレからの早急な脱出、円高是正、法人税の引き下げをはじめ各種規制の緩和による投資呼び込み、雇用機会の創出など経済の活性化を最優先課題に全力投球すべきだ。
  • お金は必要に応じて使うべきだが、財源のあてのない支出はいずれ破たんを招く事は明らかである。日本はすでにその段階に入っているが、国民の金融資産の1500兆円が国債や地方債の1000兆円の破たんをかろうじて守っているだけなのである。
  • 今回の選挙での各党の主張は「経済の早期回復」に力点を置いた自民党が、国民の政治に対する期待を一番的確に把握していると思った。誤算続きの政権政党の民主党が今更「決断」とか「政治を前に進める」と言う主張は何か空々しさを感じた。第3極は準備不足でまだ信頼感がなく全面的には任せられないと言う感じだ。
  • しばらく総選挙はないだろうから、その間に政権政党の自公は国民に将来安心して生活できる経済再生ための諸施策の実行と、国を守る事の大切さを指導してほしい。民主党はまずは3年間の政権運営の総括を、第3極は政権奪取のために内輪もめは封印して、国民に密着した足腰の強化を図ってほしい。
  • 国民は政権が変わったからと言って急に生活がバラ色になるなんて誰も思ってはいない。過去6年間に自民3人民主3人の総理大臣が次々に誕生し、安倍復活内閣で延7人目となるが、こんな状態ではまともな政策を実行できる訳がない。
  • 安倍総理大臣は前回の失敗を反省して挙党一致内閣を立ち上げ、また党執行部及び閣僚に女性4人を登用するなど新生自民党の演出もなかなかよく考えている。さらに決める政治を実現するために今年7月の参議院選の大勝利に向けて順調な船出をしたように見受けられるが、少なくとも今後3年間は腰を据えて政策の実現に頑張ってほしい。
  • 我が故郷出身の総理大臣の活躍を願うや切である。