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<No.38>東日本大震災から半年

  • 去る3月11日に東北太平洋沖で発生した大地震から半年が過ぎた。プレート境界に溜まったひずみを解消するために、マグニチュード9.0という大規模な地震が起こり大津波の発生した事が大震災の原因だが、1000年単位で見ると日本でも過去に1~2回記録がり、M8レベルでは50~100年単位で発生しているという。
  • 今回の地震の調査が進むにつれ、日本では巨大地震は生活する上で避けて通れない災害のように思われる。世界でも21世紀になってからスマトラ島沖やアラスカ沖など、プレート境界に沿って今回の規模を超える大地震、大津波が発生している。
  • 更に断層のずれにより起こる直下型地震でも日本の阪神大震災や中国四川省、ハイチの大震災などまだ記憶に新しい。
  • 今回は震源域が南北500キロ東西200キロを超える大規模地震のため、被害が東北3県を中心に広く関東地域にも及んでいる。死者行方不明者2万人、施設の損害額など20兆円規模と膨大であり、まずはこの地域の迅速な復興に全力投球することが急がれる。
  • この時期では被災者の多くが自分たちの将来の生活の不安を克服するための諸施策を、それも被災者自らが構想し計画し実行することを希望しており、国も国民もこれを長期的にバックアップする体制を作る事が必要だ。
  • 更に今後も避けられない天災であるなら今回の大震災から学ぶべき教訓は多い。それが近い将来に予想される東海、東南海、南海の巨大地震発生時に少しでも生かせるよう、大地震発生のメカニズムの徹底した調査研究、防災施設の見直し、非難訓練の徹底などやるべき事は山ほどある。
  • ところで今回の大震災で特徴的なのは、大津波で起きた福島第一原発の爆発事故による大量の放射線の撒き散らし災害だ。地震や津波のような直接の死者は出ていないが、目に見えない放射線の恐怖は計り知れない。特に小さな子供を持つ親にとっては大問題だし、原発近くに住んでいた人たちにとっては再び地元に帰って安全に生活できるのか不安で一杯だろう。また高い放射線の汚染で丹精して育てた商品が出荷停止になったり、風評被害を受けている人達の経済的損失や生活の不安は測り知れない。
  • 同じ大地震で津波を被った女川原発は無事だったのだが、福島第一は津波で緊急停止した後の処理に多くの問題があったようだ。外部電源の喪失が原因と言われているが、爆発は本当に避けられなかったのか。科学的にも政治的にも色々検証が行われているが、今後の日本のみならず世界のエネルギー政策を左右する大問題なので、時間をかけて十分調査してほしい。「危険だから止める」事は正論かもしれないが、経済力の低下、生活水準の切り下げを覚悟しなければ実現は難しい。
  • 原発では今までにも小さな事故はいくらでもあり都度対応できたが、大事故が起きた場合を想定したマニュアルはできていても、関係者は「そんな大事故など起きるはずがない。10メートルを超える津波など考えられない」と思い込んで、装備の点検や訓練にも力が入らなかったのだろう。それは嘗て津波の被害に何度も遭って、堤防や防波堤の建設に十分な時間と費用をつぎ込んで、防災対策に自信のあった地域の被災者でさえ「これなら大丈夫だ」と過信していたという言葉からも想像できる。
  • だからと言って放射線汚染の責任を免れるわけではない。地震や津波による災害は天災と言える部分が大きいので、国も国民も心から同情してできる限りの支援は惜しまないが、原発事故の本は津波であるとしても、従来からきちんと対応しておれば防げたかも知れない人災の要素が強い。したがって事故が起きた後の現場の人達の不眠不休の働きには頭が下がるものの、起こした事に対する責任は国民が十分納得するように取ってもらわなければならない。
  • 最近世界の都市の危険度指数なるものを見たが、東京は730、ニューヨークは70、ヨーロッパの首都は100以下、北京は15となっていた。これは自然災害だけでなく政治的な危険度、経済的な要素も含めての数値との事だが、にわかには信じ難い数字だ。しかし世界の人達が東京を現在そういう風に見ているのもまた1つの事実なのだろう。
  • 自動車や飛行機事故をはじめ、台風や豪雨による災害で多くの死者やけが人が毎日のように出ている。又政治的テロ事件や内戦、国家間の戦争も様々な原因で発生し、その戦闘や病気更には飢餓で多くの人命が失われている。
  • 日本でも昭和20年3月の東京大空襲で10万人以上の人が火災などで命を落とし、また大東亜戦争中には合わせて300万人もの日本人が命を落としたと言う。歴史を紐解けば世界中にこんな話は山ほどある。それでも人は時間がたつと忘れてしまい、又同じ過ちを繰り返してきた。
  • ところで色々な天災は地球が生き生きと活動している事の証明でもある。地球の内部から湧き上がる地熱の表出で火山が大爆発したり、地球表面を覆うプレートが1年にたった数センチ動いた結果50~100年に1度大津波が起こったり、地球の地軸がわずか0.5度傾きの変わっただけで世界の気候が大変動を起こして多くの種が絶滅するような事態が過去何回も地球上で起きている。しかし生物はこうした大災害を乗り越えて何万年か後に更に強い生物となって復活してきた事を歴史が証明している。
  • もちろんこれらは長い地球の営みの中で起こってきた事だから常に気にする必要はないが、一度起こったら取り返しのつかない事態ではある。現在でも宇宙から微小な物質が流れ星となって毎日10トンも地球に降り注いでいるとか、18年後にはかなり大きな小惑星が地球からわずか4万キロ程度離れた上空(月までの距離は38万キロ)を通過するとか、冬の夜空を彩るオリオン座の左上に位置するペテルギュース星が近々大爆発を起こし、夜空に月が2個以上存在する明るさが3カ月続くそうだが、この星は地軸の方向に強烈なガンマ線を放出するので、620光年と太陽系に非常に近いためにまともに浴びたら生物は全滅するとか。(調査の結果地軸は地球とは多少ずれているらしい)こんな宇宙の脅威が当たり前のようにメディアで放送されると、今この地球上で生きている事が奇跡のようにも思えてくる。
  • 地球が誕生して46億年、大型動物が水中から陸上に進出して5億年、人類が誕生して約700万年、ホモサピエンスが誕生して10数万年、最後の氷河期に日本列島と大陸がつながっていた時に、渡ってきた原日本人が誕生して高々1~2万年、そして大和政権が日本を統一してわずか1700年。そんな年月の中でも多くの災害が発生して多くの人が死に、又多くの人が生まれそして文明が発展してきた。今日の日本もその積み重ねの結果である。
  • 今その日本が政治的にも経済的にも世界からどんどん取り残されつつある。5年で6人の総理大臣、世界1の借金大国、世界1危険度の高い国、これでは取り残されるのもしょうがないのかもしれない。しかし奇跡ともいえる地球上に、そして縁あって日本と言う国に生まれ育ち、今晩年を迎えている1人として、自分の子や孫それに続く人達に希望のある未来を残してあげたいのも偽らざる心境だ。
  • 色々御託を並べながらも日本人の多くはまだまだ裕福で、明日の飯に困る人の数は新興諸国に比べればはるかに少ない。だから国の台所に火がついていても大騒ぎすることもないし、世界の国々が「日本は大震災に遭っても経済的には1番安定している国」と評価して「1ドル76円」の超円高を押し付けている事も黙って見過ごしているのだろう。
  • このままでは大地震や大津波以上の金融大災害が日本の将来に待ち受けているのは間違いないと思うのだが。私の考えは間違っているのだろうか。