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<No.33>諸行無常を感じる今日この頃

  • 民主党を二分する代表選挙が終わるとともに猛暑も峠を越し次第に秋めいて来た。
  • この夏は観測史上最高の暑さだった所為か、日中は全く仮死状態で書道の稽古もままならず昼寝もしばしば。日が落ちてから一万歩をやっと歩き終えると汗びっしょり、湯船につかってゆっくりするのが楽しみで、夕飯後はテレビを見て就寝というパターンが続いた。
  • 仕事をしていた時分には考えられない怠惰な毎日だったが、そうは言っても68歳を過ぎた齢といえば、戦前や戦後間もない頃ならすでにこの世にはいなかったわけで、その後の食糧事情の改善や医療技術、保険制度の充実などに支えられてこの齢まで生き延びていられるのだから、自身も健康で周りに迷惑をかけない生活をしなければという思いもあり、その点では良しとしよう。
  • 振り返ると今年の春はいつまでも寒くて夏への移行がなかなか進まず、クリーニングの需要が例年になく少なかったり、夏物商戦がひどく落ち込んだ処も多かった。今後の予報では秋の前半は平年より気温が高いものの、後半は急激に寒くなるという。ということは1年を通してみれば気温は平年並みということか。紅葉狩りやスキーの好きな人にはこの上ないチャンスが待っているという事でもある。
  • 近年集中豪雨が増えたとか、台風の規模が大きく強くなったとか言われるが、小学生の頃に大雨が続き門司の山々に山津波が起きて、あちこちに赤い山肌がむき出しになったのを覚えている。伊勢湾台風や洞爺丸台風など大きな被害をもたらした台風の記憶も多々あるし、阪神大震災など大地震の記憶も枚挙にいとまがない。
  • 人口がどんどん都市に集中して、もともと海の底にあった場所をあちらこちらと埋め立てて人が住むようになったのだから、ちょっとした異常気象でもすぐに大きな被害が出るのは当然かもしれない。
  • 世界中で人類が定住するのは大河や海のそば、更には火山の近くや断層地帯の上が圧倒的に多いそうだ。それは水が豊富にあり海上交通にも便利であり、鉱物資源が豊富に取れるからだそうだ。だから大地震などの自然災害にあうのは避けられないが、逆にいつ来るかも知れない恐怖に取りつかれてストレスのたまる生活をしても無意味なことだ。70年近くも生きているといろんな経験をしたので少々の事では驚かなくなった。
  • 閑話休題、お釈迦様は若くして世の中の無常(生老病死)を感じ、29歳で出家して苦行の末に悟りを開いたといわれる。その説法の趣旨は「すべて物事には原因がありその結果として現在がある。しかもそれは次の瞬間には別の状況に代わってゆく。すべては相対的な存在なので、物事にこだわってみたところで無意味なことだ。だから心を広く持ちこだわりを捨て、そしてこのことを頭で理解するだけでなく、厳しい修行を積み重ね体で納得する事である」
  • 簡単にいえばこれが「悟りの境地」というものだろう。若い頃にはこうした話を聞いてもあまり興味を持てなかったが、会社生活を終えてからある程度関心を持つようになり、さらに妻に先立たれてからはよく理解できるようになった。四国のお遍路に行く気になったのもその所為だろう。
  • やはり死という誰にも避けて通れない、そして冥土に財産は持っていけないという否応なしの現実を突き付けられると、魂の救済を求めて何らかの手立てがほしくなる。勝手と言えば勝手だが、だから宗教は永遠になくならないのだろう。
  • こうした観点から世の中の事象、事件を眺めてみると、転変地異もさして驚くほどの事はないし、色々な事件も起きるべくして起きた事と妙に納得できる事が多い。
  • 近年は科学技術や医療、地質学や歴史の解明などその発展は目覚ましいものがあり、われわれの中学高校時代に勉強したことが陳腐化しているような感さえある。身の回りにも車や家電をはじめ携帯電話やインターネットなど目覚ましい発展で、その恩恵を受けられるのはありがたい事だが、他方政治経済など文科系の分野では相も変わらず混沌状態が続いている。なぜこうした良くない状態がいつまでも継続するのだろう。
  • 「継続は力なり」といわれる。アメリカ大リーグで活躍しているイチロー選手が今年も年間200本の安打を打ち、10年連続の大記録を打ち立てたことは日本人として真に誇らしい事だが、その人知れない努力たるや筆舌に尽くしがたいものがあるだろう。こうした偉業は子供の頃からの努力の積み重ねがあってこそ初めて達成できるのであり、今後も可能な限り継続してほしいものだ。しかし日本の失われた20年の間に、こうした努力や苦労の大切さを身をもって教育してきた両親、先生、会社の先輩たちはどれほどいたのだろうか。
  • 「山で道に迷ったら高い方に登れ。そうすれば視界は開けてくるし尾根にもたどりつける。人生もこれと同じで迷ったら高見に進め」との卓見は若い人のみならず心にとどめておきたい言葉だ。
  • 国内では民主党の菅改造内閣が国民の歓呼の声に迎えられて誕生した。彼が選挙中に約束していたように命を投げ打って国内外の諸問題に取り組めば、過去の負の遺産も少しは減らす事ができると思うが、それには国民の危機意識の共有と改革に対する積極的な協力姿勢が不可欠だろう。
  • 菅氏は市民運動の中から育ってきたリーダーだから、国民を巻き込んで意思を一つに纏める取り組みには慣れているだろう。今のように大きな時代の変革期のトップには相応しいのかも知れない。ま!過大な期待は禁物だが、山口県の宇部市出身という事なのでわれわれ下関出身者も地縁的には興味がある人物だろう。
  • もし志半ばで倒れるような事があれば、いずれ四国松山の53番札所からお遍路仲間として同道する事にもなりかねないが、そうならないことを切に期待している。