<No.32>誰がやっても同じ日本の政治

  • 先般民主党の首相鳩山由紀夫氏がわずか8カ月と半ばで辞任に追い込まれた。理由は自身と小沢幹事長の政治資金疑惑そして普天間基地移転問題の混乱で、直近の参議院選挙を控えて支持率が20%台まで急激に落ち込んだためである。
  • ついこの間の衆議院選挙で賞味期限切れした自民党に代わり、鳴り物入りで登場した鳩山民主党内閣であったのに、なぜこうも簡単にやめるような羽目になったのか。
  • 鳩山氏の母親からの政治資金贈与はちょっと世間放れした行為だが、日本でも上流階級の子弟に育った人たちの中にはこうしたことが別段の問題と感じない人もいるのは事実だ。平安時代や近年の明治維新政府ではこうした人たちが政治を動かしていた。むしろ「籠に乗る人」よりもそれを「担ぐ人」や「そのまた草鞋を作る人」により多くの問題があったのではないか。
  • 小沢幹事長の西松建設献金疑惑にしても事実が明白なら議員辞職は当然だが、検察が必死に捜査した結果起訴は無理という事であきらめたのに、更にごり押しして起訴に持ち込むなど法治国家としていかがなものかと思う。彼の政治理念や政治力そして民意の汲み上げ方、選挙戦術など今の政治家の中で彼を凌ぐ能力のある人はいないのではないか。
  • マスコミは一方的にたたいてばかりいるが、では彼に代わって今の低迷する日本をどのように立て直し新しい国造りを実現するのか、そのためには政治体制はどうあるべきかなど本質的な問題を抜本的に再構築し実践しているマスコミはどこにいるのだろうか。もっと責任ある報道をしてほしい。このままだと活字放れや映像離れはますます進むだろう。
  • 鳩山氏の普天間移設見直し問題は言い始めたころから違和感があった。日米安保は日本の安全保障の根幹であることは大方の日本人にとって異議のないところだろう。しかも自民党が10年以上かけて沖縄の地元民や米国と再三話し合って決着した問題なので、これを見直す事は並はずれた決意と成算がなければ取り組むべきではない。選挙のマニフェストでうたったからやらなければならないという種類の公約とは意味が違う。懸念した通り5月末までに何もできずいたずらに沖縄の人たちの不信感をあおり、また米国側の信頼も大きく損ねてしまった。
  • 世界の一体化が進行するなかで中国をはじめとする新興国の力が強まり、他方アメリカをはじめとする先進諸国の発言力が下がってきた今日、国の安全保障の見直しは避けて通れない課題だ。鳩山氏が当初唱えていた東アジア共栄圏の構築やロシアとの国交正常化、中国との緊密な関係強化など将来を見据えた構想としては悪くないと思っているが、国家間の問題は国益が第一であり友愛や正義感で事を進めても結局バカを見るだけだ。
  • 普天間移設は国の安全保障という最も大事な問題であり、しかも戦中戦後を通じて沖縄の人々には大変な負担を強いてきたので、少しはその苦しみを国民が分担してはどうかとの呼びかけに対し、国民はほとんど一顧だにしない。それどころか名前の上がった地域は移設絶対反対を掲げて激しく抵抗しているのを見てわかるように、人は大事な問題ほど自分の損得を第一に判断し行動するものだ。
  • 日本が1990年代から長期間低迷を続けて久しい。当時アメリカに次いで世界2位だった経済大国も今ではお隣の中国に抜かれ、インドやブラジルなどにもいずれ追い越される日が迫ってきている。東南アジアや韓国などかつては歯牙にもかけなかった国々にもひたひたと迫られている。北京やバンクーバーのオリンピックでこうした国々の選手の後塵を拝して悔しい思いをしたことを忘れはしない。
  • 資源を持たない我が国が、戦後の約40年間に廃墟から立ち直り経済大国として世界にその名をとどろかせる事が出来たのは、「世界に追い付け追い越せ」と全員が必死になってがんばってきたからである。しかるに平成の世になってから話題は専ら少子高齢化、医療介護の充実、年金問題、環境保護、コンプライアンスと共産主義国家と間違えるような国策ばかりが目につく。
  • 経済が成長しない限り国民の生活の充実なんてありえないのに「生活が第一」という甘い言葉に乗って支出ばかり増やして、収入は役人の無駄使いの削減や特別会計の埋蔵金のあぶり出しなど掛け声はよいが実態はお粗末そのもので国債だけがどんどん膨らんでいく。これでは若い人たちが将来に不安を抱くのは当然だし、そのうちデモや反乱が起きてもおかしくない。消費税の早期実現が国民の過半数の支持を得てきたのも、子孫の行く末を国民が本気で心配し始めたからだろう。
  • 菅新政権が誕生して国民の支持率は大幅に回復した。本来対立軸となる自民党が四分五裂している状況ではそれも仕方があるまい。4年間で5人も総理大臣が交代するなど先進国の一員とは思えない恥さらしで国際的信用もがた落ちである。
  • もう新政権には何も期待しないが、せめて3年程度は腰を据えて日本を再構築する施策に取り組んでほしい。菅さんは四国のお遍路仲間だから支持はしたいと思っているが・・・