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<No.29>日本の政治が変わる時が来た

  • 8月30日に衆議院の総選挙が4年ぶりに行われ、戦前の予想通り民主党の圧勝に終わり、前回の小泉郵政解散の時とは正反対の結果となった。 
  • 民主党の勝因は色々あろうが、自民党が小泉元首相引退後、後継者の安倍、福田両首相が政権を1年で投出し、麻生前首相も定見がないと非難され、またこれを支える自民党議員も勝ち馬に乗るだけと言う、いい加減な対応を見てきた国民がうんざりしたと言う事だろう。私のようなものでも今の自民党ではとても政権を委ねる気にはなれないと思っていた。
  • 高度成長期には保革対立、自民党対社会党の時代が長く続いたが、実態は世界の冷戦体制を反映した形で西欧自由主義陣営に組み込まれた日本では、社会党の出番は無かった。
  • そして自民党が「政権盥回わし」と批判されながらも、革新的に戦後の悲惨な状態の日本を、世界に冠たる経済大国にのし上げた事は誰しも認めるところだろう。
  • しかし1990年を境に冷戦体制が崩壊し欧米自由主義がソ連東欧共産主義に勝利した事が明確になって、アメリカという超大国の世界支配時代の到来かと思われたが、次第にBRICsを中心とした新興諸国が経済的にも政治的にも力を持ち始めた。2001年9.11米国同時多発テロに続く報復戦争の失敗、更には先の世界金融危機以降は、日米を含む先進国の地位の低下は誰の目にも明らかとなった。
  • しかし世界全体が混沌とした状態の中で最近、経済的にはやや回復の兆しが見え始め、又政治的にもアメリカでは虐待され続けてきた黒人の中からオバマ氏が大統領に選ばれ、金融危機の打開だけでなくCO2削減など環境問題に積極的に取り組み、さらに人類の悲願でもある核兵器の廃絶にも真剣な姿勢を見せるなど、ブッシュ時代のアメリカとは様変わりの対応を見せている。
  • 一方わが国も民主党政権がスタートし、何となく新しい時代が到来したような感じがし始めている。鳩山首相は若い頃「宇宙人」と言われちょっと変わった人と言う感じだったが、弟の邦夫氏よりはおっとりした品の良さがある。また政治一家の世襲とはいえ工学系出身で今までにない新鮮さもある。期待と不安が入り混じるが高い内閣支持率に是非応えて欲しいものだ。
  • もう独りの重鎮である小沢新幹事長は豪腕で知られ、灰汁の強さは人一倍の様だが、彼が自民党から分裂した時「民主主義政治を定着させるには2大政党体制の確立が不可欠」と語っていた。その後20年の紆余曲折を経てやっとその形ができた事は日本国民としても実に喜ばしい。多くのマスコミは小沢氏のあくどい面を強調しすぎる嫌いがあるが、民主主義の原点である国民との対話を基本に据えた選挙戦術など、今の自民党や他の政党の見習うべき点は多い。
  • 官僚主導の政治を廃して国民から選ばれた政治家が中心となって政治を行うと言う主張は当然とはいえ新鮮に聞こえる。高齢化社会を迎えるこれからの時代に、大切な生活の基である年金事務の杜撰な処理や、国民の圧倒的な支持を得た郵政民営化推進をなし崩しに反古にするなど所謂既得権益を守るだけの政治は終わって欲しい。
  • これも工学系出身の菅副総理が責任を担う、日本の将来図とこれを実現するための戦略計画を立てる国家戦略局の設立や藤井財務相、仙石行政刷新担当相などが中心となって国家予算の無駄使いを徹底調査し、その財源で子育て手当の創設や高速道路料金の無料化を実現するとか、前原国交相が建設中のダム工事を時代の要請にそぐわないとしてストップさせるなど、マニフェストに基づく新しい手法の政策推進が毎日話題になり、政治がいっぺんに活性化してきたようだ。
  • 国際的にも新政権は注目を集めている。日米関係のみならずロシア、中国との関係も動きそうであり「脱欧入亜」と言うことになるかも知れない。CO2問題では2020年までに90年比25%削減を掲げ世界をリードしようとする意欲は、従来の発想からはありえない政策である。
  • 今の日本はパラダイムの変換を迫られており、そのためには既存の自民党政治では殻を破れない、国民はそれに気づいて民主党に期待したのだろう。改革は元々民主党の主張だったのだから既得権益にとらわれず大いに蛮勇を奮って欲しい。国民もある程度痛みを共有し若い人たちの将来に夢を与える国造りに協力する事が肝要だろう。
  • 一方、大敗した自民党がどんな政党に生まれ変わるのかこれも興味は尽きないが、今までの古い体質から脱皮して、20年くらい先を見通した全く新しいビジョンと政治手法を作り上げた時、再び安定した政権が取れるであろうし、我々国民も2大政党の一翼を担う自民党の再生を願って止まないものである。