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<No.26>世界は変化を続けている

新年おめでとうございます。

  • 一昨年アメリカのサブプライムローンの破綻に端を発した金融危機が昨年全世界に広がりついに金融資本主義体制が崩壊し新秩序へ移行か、などと真剣に議論されている。 
  • 事実世界の金融市場は一時期機能しなくなり、多くの金融システムや企業が破綻し、今もその懸念は拭われてはいない。
  •  思い起こせば、日本で1980年代半ばに外貨準備の減少のために内需拡大が図られ、金融機関が積極的に貸し出しを増やし、企業も消費者も不動産を中心とするバブルに踊ったが、90年代に入り貸し出しを急に引き締めたために悪夢は崩壊し株価が1年で半分以下に暴落、その翌年から景気は長期不況に陥り失われた10年とも言われる凋落の惨めさを経験した。
  • この閉塞状況を打ち破るために小泉内閣が経済財政の抜本的な改革を5年をかけて実行してきたが、これに比べ今回の世界的な金融危機に対応した各国の行動のスピードは桁違いに速く且つ大胆である。それだけ世界の金融バブルは深刻なのだろうが、危機を克服するには何よりもこうした果断な処置がもっとも必要な事は言うまでもない。
  • 一方ここ10年で力をつけてきた新興諸国の経済の活況で、原油を始め鉱物資源や食料などの価格が高騰しインフレの脅威に襲われ始めていたが、これも昨年秋頃から急速に需給が改善され始め、今や原油価格は昨夏ピークの4分の1に急落、ガソリンの値段も当時の180円台から既に100円割れも散見されまだまだ下がると言われている。
  • その他の資源や食料なども軒並み急落し当分物価は下がり続け、今年は一転して世界的にデフレの危機が迫っているといわれている。
  • これについても1974年に始まったオイルショックで、やはり原油を始め鉱物資源価格が一挙に何倍にも跳ね上がり日本でも物価の高騰で巷ではトイレットペーパーの買占めに狂奔したが、給料も3割くらい上がったので当初はそれほど深刻さはなかった。しかし狂気が終わった翌年から一挙に資源価格が下がり始め経済もそれにつれて深刻な不況に陥ったので、世の中全体が急に暗い状況に変わったように記憶している。
  • 何だか今回の状況ととてもよく似ているが故に、恐らく今度も半年か1年くらい不況は続くだろうが、色々対策も打たれるだろうから今年夏くらいからまた少しずつ状況が改善されてくるものと期待している。
  • しかし今回は世界同時不況と言う過去に経験のない事態であるため、先進国も新興諸国も今までにない思い切った景気刺激策を次々に打ち出し実行に移している。EUは金融危機の張本人であるアメリカを常にリードする行動で、これからの世界政治の主導権を握ろうとしているように見える。新興諸国では中国が、北京オリンピックの余勢を駆って大規模な不況対策を始めている。ここも将来のアジアの覇権を目指した動きなのだろう。
  • アメリカも政府とFRBが一体となって戦時経済のような体制でこの非常事態に対応している。この間にも次期大統領選挙を1年がかりで実行し、しかも嘗ては奴隷として酷使した黒人の子孫から新大統領を選ぶと言う画期的な結果を生み出した。すごいことだ。アメリカの凋落をどのマスコミも各部門のリーダーも声を大にしていうが、こうした事ができる国の将来はまだまだその底力を甘く見てはいけない。
  • ところで日本はどうか。自民党挙党一致で選ばれた麻生内閣が、早くも支持率10%台とレイムダックのブッシュ大統領より低くなり、総選挙もできない死に体内閣の様相を呈している。恐らく国民の多くは民主党にも大して期待はしていないが、昔のように自民党の中で政権を盥回しするより、選択肢を増やした方が国民にとって多少ともプラスになると考えているのではないか。
  • 最近、竹中平蔵氏と桜井よし子氏の「世界金融危機の現状と日本の役割」という趣旨の講演を聞いたが、いずれも主張するところは「日本経済が規模ではまだ世界第2位と言うそれなりの力があるうちに、日本と言う国家国民を意識し世界に貢献する政治の一流国家を目指すべきで、さもなければ日本国の将来はない」という話だった。もっともな事だ。
  • しかるに、せっかく進めてきた小泉改革を棚上げして、時代遅れの公共投資やばら撒き福祉に無駄な税金を使い、国民にも愛想をつかされている自民党政権の現状ではとても無理な事だが、こうした状況を作り出した戦中戦後時代を生きてきた我々世代も、楽しい老後を送る事だけに現を抜かすのではなく、もっと責任を感じて日々を生きる必要があると思う。