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<No.25>サプライズの連続

  • 今年もこのところ周りが秋の色合いを深めてきたが、顧みるとまず北京オリンピックにはびっくりした。中華人民共和国としては天安門事件で世界から強い批判を受けて以来、国づくりを根本から見直し、世界の超大国を目指して13億人の意識改革と国威発揚のために、北京と言うより中国国家そのものが威信をかけたオリンピックだったといえよう。
  • 直前になってチベット問題が巻き起こり、また四川地域では想像を絶する大震災が発生し、一時は大会の開催が危ぶまれたが、よくこの困難を乗り越えて素晴らしい大会を実行しえた事は中国の国家国民に大きな自信を植え付けるとともに、近い将来アメリカ、EUに並ぶ世界のリーダーの地位を占める事を十分に予感させる。
  • この日のために建設されてきた各種インフラや、斬新で豪華な競技用の施設、開会式における多種多様な催し物と観客の盛り上がり、競技役員の一糸乱れぬ運営振り(中でもアシスタント美女軍団の活躍は圧巻)、そして今まで欧米諸国に奪われていた金メダル獲得トップの座を、初めて黄色人種が圧倒的な力で勝ち取った事は「サプライズ!」の一語に尽きる。まさに歴史に残るオリンピックだったと言えよう。
  • しかし、こうした栄光の陰には悲惨な事件が必ず起きる事もまた事実だ。それはこうした時を狙って不正に私腹を肥やそうとする輩が出てくるからだ。メラミンのミルク混入事件などその典型だろうし、また産地表示偽証など枚挙に暇がない。そしてオリンピックに便乗した土地売買や建物の建設ラッシュもそのメッキの部分が剥がれる時が来た。
  • これと似たような話題として、昨夏起こったサブプライムローン問題に端を発した世界的金融危機が世界を揺るがしているが、基はと言えばアメリカのブッシュ政権の、貧困層にも持ち家を持たせるという夢のような政策に、金融建設などの関係者が自己の利益増大のために便乗してこの政策に協力推進し、ローンの債権化という便利な方法を考案してそれを世界中にばら撒いたために、気がついたらバブルが膨れ上がりそれが破裂した今、未曾有の金融危機が訪れ、結局世界中の人々に大迷惑をかける事になったということだろう。
  • この問題はアメリカが蒔いた種だから自らが責任を感じて後始末をするのは当然だが、その処理の迅速さはこれまたサプライズの連続で、嘗て日本が経験したバブル処理のスピードとは天と地の差がある。
  • そんな最中に福田首相の突然の辞任サプライズニュースが流れた。改造内閣が誕生して1月も経たない、そして首相に就任して1年も経たないうちにである。安倍前首相の辞任の時もたった1年でしかも施政方針演説を終わった直後だった。その時の辞任の理由があまりにお粗末だったので同郷の私としては内心忸怩たる思いをしたが、今回も群馬県には同じ気持ちの人が多いのではないか。「一国の宰相たる者は命がけで国家国民のために心血を注ぐ」などという言葉は今や死語になったということか?
  • 確かに平成時代になって竹下さん以降20年で13人も首相に就任しているが、小泉さんを除くと14年間で12人も首相が交代しその平均任期は1年2か月だ。これではとてもまともな政治はできっこない。しかしそうした政治家、政治システムを選択したのは我々国民であり、今日日本全体の仕組みが陳腐化し生活が窮乏化をきたしているのも我々自身が招いた結果であることを忘れてはならない。
  • 先日麻生内閣が誕生したが、今のところあまり人気は高くないようだ。一方の民主党も小沢党首の暗い性格や自民党時代の言動、その後の新党結成以来の独断専行的態度が影響して人気は盛り上がらない。近づく総選挙の結果は予断を許さないが、ねじれ国会を修正する絶好のチャンスではある。 
  • 世界に三権分立の近代政治思想が広まって以降でも日本の政治は行政権を握るものが常に圧倒的な力を保持してきた。敗戦後も占領軍の指導で憲法に国会が国権の最高機関であると明記されているにも拘らず、実態は行政主導の政治が行われてきた結果、その弊害がいたるところに噴出しているが、次回の総選挙で民主党が唱える、国会が主導権を握る体制が誕生すれば、これはまた日本の政治にとってビッグサプライズとなるだろう。