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<No.14>精神の構造改革

新年おめでとうございます。

  • 暖冬に慣れてしまったためか、それにしても今冬は寒い。12月というのに異常な低温が続き、日本列島の各地から積雪の新記録が伝えられているが、地球温暖化の話はどうなったのだろう。自然がその力を人間に知らしめているのだろうか。
  • 自然災害といえば、昨年もパキスタン東部の大地震を始め、アメリカ南部のハリケーンの猛威、国内では14号台風の被害や年末の羽越線の脱線転覆事故など枚挙に暇がないが、いつも人の意思のあいまいさによってその被害の規模が拡大する傾向にあることは残念だ。
  • 福知山線の事故は昨年の最悪の人災で、事故に遭われた人々や家族のことを思うと言葉もない。また昨今、話題になっている建物の耐震強度偽装事件など、人災の最たるもので驚きあきれるばかりだ。まあこれは大多数の人々の「想定の範囲外」の事件で、こんなことが実際に起こりうるなど夢想だにしなかっただろう。
  • 人生のビッグイベントとして購入した物件の耐震性に大きな問題があれば、地震列島といわれる日本ではいつ命の危険にさらされるかわからず、偽装物件を購入させられた人たちにとってはまさに死活問題だろう。しかもその原因が、供給する側の利益追求のなせる業だとするなら、そのモラルの低さは救い難い。
  • もし自分が家を求める立場なら、そんな物件をわざわざ買って住むだろうか。自分さえ良ければ「後は野となれ山となれ」では社会生活は成り立たない。徹底的に事実を究明し再発防止に全力を注いで欲しい。 こうなったのは、やはり第2次大戦後のわが国の精神教育の荒廃が背景にあるのだろう。敗戦により戦前の日本の制度や考え方が全て否定され、新たに西洋資本主義、民主主義教育が導入され、物質の豊かさやお金の価値がもてはやされた結果、生活は豊かになった反面、精神面で失ったものはそれ以上に大きかったのではないか。
  • 小泉内閣の構造改革は経済的には一定の成果を上げつつあり同慶の至りだが、後継者は人文科学分野の抜本的な改革を進めないと、日本の本当の意味での改革は終わらない。実はこれがもっとも困難な課題だが、多くの人材による議論が必要であり、同時にその成果を社会全体に浸透させるには多大なエネルギーと困難を伴うだろう。
  • 教育を根底から問い直し、一人ひとりが自分の哲学を持ち、確固たる人生観を持てる社会作りが肝要だろう。その意味では、戦後の日本の物質的な繁栄を作り上げてきた我々世代は、他方で大きな負の遺産を残してきたわけで、故意か過失かは別としてその罪はあまりにも大きい。「国敗れて山河あり。城春にして・・・」と言う最悪の状況は回避できたが、物質的な豊かさを維持向上したいがゆえに、多くの若者が結婚や育児に負担を感じ結果、少子高齢化により国家の成立基盤をも危うくすることになろうとは、なんとも皮肉なことだ。
  • このことの反省と行動なくしてわれわれの人生を有終の美で締めくくりようがない。元気なうちに子孫に美田を残せるような実績を積みたいものだ。