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<No.12>会社は誰のものか(その2)

  • 今春、ライブドアとフジテレビが日本放送の買収を巡って熾烈な争いを演じ、世間の注目を浴びたことは記憶に新しいが、当事者間の結果の良し悪しは別として「会社は誰のものか」と言う基本問題について「会社は株主のものだ」と言う明確な回答が出た。
  • 時あたかも海外からの企業買収が遣りやすくなる時期を来年に控えているため、会社法が瞬く間に改正され、さまざまな買収防止の手段が可能になった。しかし、その対応は会社がハリネズミのように鎧を纏って縮こまり、既得権益を死守することが目的のようである。
  • トヨタ自動車のトップの言を待つまでもなく、買収防止の最高の手段は企業の全財産を有効に活用して企業価値を高めることであるという視点からは程遠い。昨今の株主総会では物を言う株主が増えてきて、こうした企業防衛手段の導入が拒否されるケースが多く、ぬるま湯に浸かっている経営者を震撼させているが、いい傾向ではある。
  • 数多くの不祥事による会社の凋落は当然として、まじめに仕事をしていても環境の変化に対応が遅れて苦境に立つ会社も多い。アメリカのGMやフォードのような世界の超一流会社でも赤字に転落し、投資の対象から脱落するなど隔世の感がある。しかし、時代は常に主役の交代を要求してきた。50年も生き残る会社は珍しいが、それは時代の要求を先取りする商品やサービスを常に提供し続けてきたからだろう。
  • 先日、横山君の主催する「マリーナサロン」で濤崎君が「日本の金融バブルと崩壊の実態」について、赤裸々な実体験をまじえながら熱弁し、更に今話題の「郵政民営化の必要性」についても理路整然と語ってくれて共感を覚えたが、特に官公庁と結びついた業界はどうしても共産主義的(官僚主導の保守的、談合的)経営になりがちで最後は時代の波に押し流されてしまう。
  • 1400兆円の国民の金融資産に対し、国債、公債、みなし国債を合計すると1200兆円に達し、今も毎年50兆円の借金が膨らんでいるというが、誠に背筋の寒くなる状況である。この付けはいずれ増税、国民生活向け歳出のカット、またはインフレによる貨幣価値の下落という形で国民に圧し掛かってくる。郵政民営化はその借金体質を抜本的に変える手段であり、今、実行しないと取り返しの付かない禍根を後世の日本国民に残すことになる。年金改革や行財政、公営企業の改革も全て次世代に負担を残さないための厳しい試練である。
  • こうした認識を持たず構造改革に反対する勢力は既得権益の守旧派と言われても当然だろう。またこれらに寄生して甘い汁を吸っている企業も反省し、将来明るい展望を持てる国つくりに協力すべきではないか。
  • かつてJFKが大統領就任演説で述べたように「国に何を求めるか」より「国に何を貢献できるか」と言う視点を今、日本人1人ひとりが持つことだ。